自民党総裁選(9月14日告示、26日投開票)の本命を決めるのは、実は議員でも党員でもない。
菅―野田と過去2代の首相は財務省が増税推進のために担ぎ上げた。
次の政権も、財務省にとって重要な役割を担っている。消費増税の法案は民自公3党で成立したが、まだ増税が決まったわけではないからだ。
消費税の引き上げは2014年4月からの予定だが、実施には半年ほど前に新税率を閣議決定しなければならない。その間に増税に慎重な政権が誕生し、「景気が回復するまで実施しない」と判断すれば消費税引き上げを凍結できるのである。
その財務官僚のお眼鏡に適った総裁候補が石原伸晃・幹事長だ。森喜朗・元首相側近の町村派幹部がこういう。
「森さんや青木(幹雄・元参院議員会長)さん、古賀誠さんなど各派の長老は早くから谷垣総裁をクビにして石原幹事長を総裁選に擁立する方針で一致していた。安倍には増税より経済成長という上げ潮派がついているし、軍事オタクの石破は長老のいうことを聞かない。その点、ボンボンの石原は何でもいうことを聞くから扱いやすいし、霞が関の覚えもめでたい。御輿は軽い方がいい」
菅、野田に続く3人目の財務省パペット首相候補というわけだ。
長老組の1人、古賀氏が「若い人材を育てたい」と石原支持をほのめかして谷垣氏の支援要請を断わり、それまで谷垣支持を表明していた森元首相まで、「がらっと僕の気持ちは変わった」と突き放したのも、谷垣氏を下ろして石原氏を後継総裁に据えるというシナリオ通りだったのである。
そのうえ、石原氏には父の慎太郎・東京都知事の後押しもある。慎太郎氏は「新党をつくる」といい続けて周囲の気をもたせ、維新とのパイプで伸晃氏と橋下徹・大阪市長との会談も実現させた。それも、「すべては息子の総裁就任までの時間稼ぎで、結果的に石原新党を期待する大阪維新の会や他の第3極の東京進出をうまく食い止めてきた」(自民党東京都連幹部)と見られている。
石原ジュニアはパパと長老たちの妖怪じみたキングメーカーの暗躍で有力候補にのしあがったのである。
世論調査の支持率が石破氏より低い石原氏は総裁選の党員投票では水をあけられると見られているが、「決選投票は議員票だけで決まる。主要派閥は石原に乗る根回しが済んでいるから十分勝てる」(同前)と自信満々だ。
※週刊ポスト2012年9月21・28日号