上昇機運を見せない日本株だが、低迷しているのは日経平均やTOPIX(東証株価指数)といった全体相場のインデックス指数であって、個別銘柄の値動きにはまったく違う様相がみられることが判明した。
22年間で5000社以上を取材し、株式市場で勝ち残ってきたファンドマネージャーであるレオス・キャピタルワークスの最高投資責任者・藤野英人氏はこう指摘する。
「例えば、2001年9月~2011年9月の10年間でTOPIXは26%下落している。ところが、同じ10年間の個別銘柄ごとの株価指数をみると、データがとれる全上場企業(2618社)のうち、57%(1493社)、約6割もの銘柄が上昇しているのです。
私がセミナー会場で『この10年で、日本の全上場企業のうち、株価が上昇した企業は何%あるでしょうか』という質問をすると、10%とか20%とかという回答が多いのですが、正解をいうと、皆さんびっくりします」
この驚きの事実は、いい換えれば「会社四季報を適当にめくり、会社名など気にせずランダムに株を買っても、6割の確率で上がる」ということである。
しかも、さらにその確率を上げる投資法があるという。
「大型株ははなから敬遠して、中小型の個別銘柄に絞って投資する手は有効だと思います。実際、過去10年で上昇がみられた銘柄のうち、96%は時価総額3000億円未満の中小型株でした」(藤野氏)
一方、大型株はどうだったか。東証1部上場の時価総額上位30社のインデックスであり、ソニーやパナソニック、トヨタ自動車など超有名企業が名を連ねるTOPIX CORE30は、この10年間で何と45%も下落している。
対して、同じ10年間で東証小型株指数は13%、東証2部指数は24%、それぞれ上昇している。
そもそも、TOPIXも日経平均株価も、その算出においては大型株のウエイトが高くなっている。大型株の値動きに大きく左右される指数であり、上場全企業の株価を平均しているわけではない。
つまり、過去10年間で大型株の下落が顕著だったことが、全体相場のインデックス指数を押し下げたのである。中でも、特に足を引っ張ったのが超大企業群だったということだ。
「個人投資家の多くは、誰でも知っている有名な会社、大きな会社に投資すれば安全だと思いがちです。しかし、この10年間でいえば、そのように考えた人たちには過酷な結果となっています。
そのため、株は危ない、個別銘柄などとんでもないといった機運が蔓延してしまった。個別銘柄が敬遠されているのは、いわば“大企業のとばっちり”を受けているからなのです。
さらに中小型株に絞れば、6割の確率が7~8割に上がる可能性は高いでしょう」(藤野氏)
※週刊ポスト2012年9月21・28日号