自民党総裁選への立候補を正式表明した安倍晋三元首相。会見では、5年前に首相辞任のきっかけとなった「潰瘍性大腸炎」がほぼ完治したことを報告。「常に潰瘍が数個あったのが、今は本当にキレイになっている」と健康面での再起も誓った。
医療ジャーナリストが、改めて潰瘍性大腸炎について解説する。
「大腸の粘膜に潰瘍やびらんができる病気で、『クローン病』とともに炎症性腸疾患に分類されています。患者さんは度重なる血便や下痢に苦しめられ、ひどくなると大腸がんの合併頻度も高まります。潰瘍性大腸炎の国内患者は10万人を超えていて、毎年5000人ずつ増えているようです。原因が不明なことから厚労省の『難病性疾患克服研究事業』に指定されています」
だが、治療法に明るい兆しも見えている。安倍元首相が「2年前に特効薬が発売されたことで、今はまったく問題なくなりました」と語ったように、2009年12月に治療剤の『アサコール』が発売され、昨年1月から長期処方が可能になったことで、飛躍的に症状の改善が見られる患者が増えているという。
このアサコールを発売したのは、ゼリア新薬工業という中堅製薬メーカー。一般に馴染みが薄いかもしれないが、関節痛内服薬の「コンドロイチン」や滋養強壮剤の「ヘパリーゼ」はコンビニでも販売されている。
大衆薬とともに同社が力を入れているのが消化器疾患系の医療用医薬品。主要6品の販売はいずれも堅調で、特にアサコールは年率2ケタの成長ぶり。2012年度は108億円の売り上げ(共同販売の協和発酵キリンとの合算)を見込み、大事な収益柱に育った。
さらに、ゼリア新薬が大きな市場を見込めると期待を寄せているのが、“がんの治療薬”の普及である。かつてがんの免疫療法として話題を集め、いまも有償治験薬として多くの患者が使用している「丸山ワクチン」。それと同じ成分構成で、がんの放射線治療による白血球の減少を抑える薬「アンサー20」を、既に1991年から発売しているのだ。
そして、丸山ワクチンを使った抗がん剤の開発も着々と進んでいる。
「子宮頸がんの治療薬として最終臨床実験に入っている『Z―100』(開発コード名)は、2年後に厚労省に製造承認申請をする予定。これが順当にいけば、さらに別のがん種の治療薬にも応用すべく、研究開発を続けている」(ゼリア新薬の関係者)
今後も大衆薬と医療用医薬品の“全方位”戦略で成長を加速させたい考えのゼリア新薬。中堅メーカーといえども、その存在感は確実に高まっている。