成長力は銘柄選びの重要ポイントではあるが、では、爆発的な成長力のある銘柄が最強かといえば、そうではない。瞬間風速的な成長力はなくとも、長期にわたって安定して高成長を続ける銘柄に投資すれば、指数をはるかに上回るパフォーマンスが期待できる。
実際、コカ・コーラやP&Gなど、長期にわたって高成長を維持し、増配を繰り返してきた株は、たしかに存在する。では、そうした“未来のコカ・コーラ”ともいうべき「世界最強の個別株」を具体的にどう探していけばいいのか。海外投資のカリスマ、グローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏が解説する。
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今回は、世界に上場する6万7413銘柄のなかから、「未来のP&Gやコカ・コーラ」のように、不況をものともせずに上昇を続ける銘柄を探るため、以下の選定方法を用いた。
■銘柄選定方法■
【1】ROE(株主資本利益率)=20%以上。
【2】自己資本比率=40%以上。
【3】過去5年間の年間平均売上高成長率、年間平均利益成長率、年間平均1株当たり配当成長率がともに20%以上。
【4】時価総額=10億ドル(約800億円)以上。
【5】市場占有率が1位であり、かつその市場自体が今後も大きな成長が期待できること。
まず財務面でいえば、ROE20%以上という高い収益性を誇り、自己資本比率40%以上という財務の健全性を持ち合わせていること。業績は、リーマン・ショックや欧州危機に見舞われた過去5年間で見て、P&G同様、売上高、利益ともに年平均10%以上の成長を続けていることを条件とした。
また、資産を増やしていくためには配当を再投資して複利で回した方が最終的なリターンはより大きくなる。過去5年間で年平均20%以上の増配を続けてきた銘柄は今後も期待できるだろう。さらに、小型株では業績推移が不安定になるリスクが高いため、時価総額10億ドル以上で、かつ成長市場で圧倒的なシェアを持つ企業に絞り込んだ。
万全を期すために、チャートの形状の美しさにもこだわった。それは「長期トレンドを示す200日移動平均線が基本的に上向いており、株価も同平均線をサポートラインとして過熱感なく右肩上がりのきれいな上昇トレンドを描いている」というものだ。なお、日本から直接投資できる個別銘柄でなければ意味がないので、日本の証券会社で購入可能な銘柄に限定した。
「安定的に高成長が望める」という、一見矛盾するような条件をクリアするためには、このように業績や財務の数値だけでなく、規模や競争力、株価推移まで見ていかないと難しい。
しかし、それらすべてを兼ね備えた銘柄を探し出し、年率20%成長が長期にわたって続いていけば、年率20%ずつ資産を増やしていくことも期待できる。それが実現すれば、毎月3万円の積立投資で10年なら1121万円、20年なら8064万円の資産が築ける計算となる。
では、スクリーニングの結果を見てみよう。
今後の長期投資にも十分耐えうる最強の銘柄を探すために厳しい条件を重ねた結果、上記の条件を完全に満たしたものは、わずか5銘柄に絞り込まれた。
現在、成長が鈍化しているとはいえ、依然として7%台の成長を誇る中国から2社、今後有望なインドネシアから2社、そしてベトナムから1社という、いずれも新興国の消費拡大に伴って業績拡大が望める内需の勝ち組企業が名を連ねた。
まずは、中国におけるティッシュペーパーや生理用品、紙おむつなどサニタリー製品の最大手で、「中国のP&G」といわれる恒安国際(香港・01044)である。ティッシュペーパーのような汎用品は価格以外の差別化が図りにくく、すでに強固なブランド力とシェアを持つ最大手企業がさらに圧倒的に強くなっていく分野といえる。
売上高7兆円を超える本家・P&Gに比べ、同社はまだ2000億円程度にすぎないが、中国マーケットの規模を考えれば、まだまだ成長の余地は大きい。
同じく中国株からは、中国最大のネット企業である騰訊控股(テンセント=香港・00700)も浮上した。優れた財務内容に加え、特筆すべきは過去5年間の成長率だ。売上高、利益ともに50%を超え、今回厳選した銘柄のなかでもダントツである。株価は2004年の上場以来、5年で40倍以上まで膨らんでいるが、まだまだ上値が望める。
そして、資源が豊富で世界第4位の人口を誇り、注目が高まっているインドネシアからは、自動車最大手のアストラ・インターナショナル(ASII)と大手食品会社のチャルーン・ポーカパン・インドネシア(CPIN)の2社が入った。
前者は国内自動車市場で50%超と圧倒的なシェアを誇るほか、重機事業や金融など幅広く手がける同国最大のコングロマリットで、その優位性は揺らぎようがない。一方、後者は同国最大の家禽企業で鶏用飼料が収益の8割を占める。イスラム国家であるため、所得向上に伴う鶏肉の消費拡大が見込める。62.79%という配当成長率も魅力だ。
5社目がベトナムの乳業最大手・ビナミルク(VNM)。ベトナムの1人当たりGDP(国内総生産)はまだ1200ドル前後と低く、今後数十年にわたって息の長い成長が期待できるため、成長率はさらに高まっていくものと思われる。
※マネーポスト2012年秋号