いまや全国に39か所もあるアウトレットモール。実は9月が狙い目だというのは流通ジャーナリストの金子哲雄氏だ。金子氏がアウトレットでのお得な買い物術を伝授する。
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1993年に日本初の本格的アウトレットモールが登場して、約20年。いまや全国に39か所のアウトレットモールが存在し、その市場規模は5930億円にものぼる(2011年度見込み/矢野経済研究所調べ)。
通常は値引き販売を行なわない高級ブランドや、人気ブランドの商品が常に定価よりも安く買えるとあって、アウトレットはデフレを追い風に急成長。買い物の新しいスタイルのひとつとして、すっかり定着した。今年も各地で新規開業や既存施設の増床が相次ぐなど、引き続き注目度は高い。そこで、アウトレットモールのお得な買い物術を紹介しよう。
今年の夏物商戦では、百貨店がセール時期をずらしたことが災いし、メーカーや販売店は大量の在庫を抱えている。8月下旬~9月にかけて、それらの売れ残り在庫品がアウトレットに流れ込む可能性が極めて高く、9月は絶好の買い時といえる。
では、アウトレットでは何を買えばよりお得なのか。それを判断する目安となるのが、「購入価格÷使用回数」という数式だ。私の場合、この数式に従い、1~2回しか着られない仕事用の衣装や、名刺入れやカバンなどの高級皮革小物をアウトレットで購入している。
ワードローブの定番として着回す服は使用回数が多いため、正規価格で購入しても元は取れる。だが、着る機会が限定される礼服や個性的なデザインのアイテムなどは、定価購入を前提にこの数式で計算すると、1回あたりのコストが恐ろしく高くなってしまう。
そう考えると、使用機会の少ないものほどアウトレット購入がお得なのだ。礼服など冠婚葬祭関係の衣類や、成長に合わせて買い替える子ども服、定価ではちょっと手が出ない派手めのアイテムなどは、元値の安いアウトレットで買うのが得策だ。
アパレル以外では、特定のシーズンにしか使わないアウトドア用品や、たまにしか使わないゴルフ用品などのスポーツ系アイテムも、アウトレット購入に最適だ。アウトレットモールでは、女性客だけではなくファミリー層を意識したテナント構成にシフトしており、「モンベル」や「エーグル」などのアウトドアブランドや、「キャロウェイゴルフ」や「テーラーメイドゴルフ」などのゴルフ用品のアウトレット店も、多くのモールに出店している。
財布や名刺入れなどのレザー小物や、高級ブランドのバッグなども狙い目だ。百貨店や正規店ではなかなか値引きされない高級な皮革製品も、ごく小さな傷がついていたり、流行色や少し派手めのデザインというだけで、アウトレットではかなり安く売られており、お得度が高い。
そのほか「ル・クルーゼ」や「マイセン」など海外ブランドの調理器具や高級食器、時計の「タグ・ホイヤー」や「セイコー」なども正規店では値引きされることがほとんどないので、アウトレットで買うといい。
もともとアウトレットは、過剰在庫やシーズンオフの商品、傷がついた難ありの商品やサンプル品、製造・販売中止となった廃番品など、正規商品として扱えない商品を割引販売する業態として誕生した。だが、最近ではアウトレット向けに製造原価と価格を抑えて作られた「アウトレット専売品」も増えてきている。アウトレットモールの増加により、正規品だけでは品数が足りなくなってきたためだ。
アウトレット専売品は、オンシーズンのものを安く買えるメリットはあるが、正規品を買いたい人にとっては不本意だろう。「アウトレットオリジナル」などと明記して販売されている場合もあるが、不明な場合は店員に聞いてみるといい。
※マネーポスト2012年秋号