尖閣諸島をめぐって中国ではまたぞろ反日の動きが強まっている。中国に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏が解説する。
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尖閣諸島の魚釣島を国有化したことを受けて中国で大規模なデモが起きた。その規模は全土で約6万人、日中国交正常化以降で最大となった。
デモ隊の一部は暴徒化し、青島でジャスコが店舗に侵入して略奪、また工場が襲撃を受けるといった事態まで発生した。法人に直接の被害が及ばなかったことが不幸中の幸いと言わざるを得ない。
このデモはある程度予想されたものだった。そもそも満州事変の入口である柳条湖事件が起きた「9・18」に向け、大規模な反日デモが呼びかけられていたからで、ウィークデーにあたる9月18日よりもその前の週末である15日と16日にそのピークが来ると考えられたからだ。
この問題がこの後どう転んでいくのか。
鍵を握っているのはやはり9月18日のデモだ。この週末デモがピークとなり、さらに「9・18」の勢いが下火になれば、当局が一気に引き締めに入る可能性が高い。もちろんその際に勢いが衰えなければ手の施しようがなく、問題は新たなステージに突入することは避けられない。
勢いがすこしでも殺がれればすぐに取締りが始まることが予測されるのは、〝十八大〟(中国共産党第18回全国代表大会)の開催のスケジュールを考えれば、どうしてもこの時点で一度鎮静化を図る必要があるからである。
加えて、今回のデモでも各地で毛沢東の写真を掲げる若者が多数確認されたことが当局の警戒心を刺激している。
毛沢東の写真を掲げる行為は、文字でこそ表現されないものの、その意味するところは一つだけ、反政府の旗印だからだ。放置していたらいずれデモ隊は日本大使館ではなく政府の重要施設へと向かうことが改めて予測されるのである。