妻が外国人を殺害したほか、重大な規律違反に問われ身柄を拘束されている中国の薄熙来・前重慶市党委書記が取り調べの最中に心臓病の発作を起こし、入院していることが分かった。
薄氏は3か月前にも心臓病の発作で病院に緊急搬送されており、2度目の入院となる。共産党内では10月中旬にも開かれる党大会前にも起訴したいところだが、裁判が遅れる可能性も出ている。
香港紙「東方日報」によると、薄氏は全国人民代表大会(全人代=国会に相当)が終わった翌日の3月15日に身柄を拘束されて以来、河北省にある党規律検査委員会の施設に軟禁状態で取り調べを受けている。
党最高指導部としては、2度目の入院ということもあり、起訴の先送りを検討している。しかし、党大会後の起訴となれば、年内の公判開催は難しく、年明けにずれ込むことも考えられるため、事件に関する記憶が風化し、党大会と連動させるという政治的な効果が薄れるのは必至だ。
これは薄氏と同じく太子党(高級幹部子弟)勢力に属している次期最高指導者の習近平国家副主席や、江沢民元主席ら上海閥には好都合だ。一方の太子党勢力らと激しい権力闘争を展開している胡錦濤主席ら中国共産党主義青年団(共青団)閥にとっては、攻撃材料を失うことになりかねず痛手であることは間違いない。
また、問題なのは裁判を開いても、薄氏が自らの罪状をすんなりと認めるかどうかだ。英国人殺害の容疑で逮捕された妻の谷開来氏は、裁判で自らの罪を全面的に認め、殺人罪では軽い執行猶予付きの死刑判決を受けた。しかし、プライドが高い薄氏の場合、容易に起訴事実を認めないのではないかとの見方もある。
そうなれば、いまだに左派思想を信奉し、薄氏を支持する人々が国内にまだまだ多数存在するだけに、胡錦濤政権は最後の最後まで、難しい舵取りを迫られることになる。