駅ナカ、デパ地下、新しい商業施設のフードコーナーなど、あらゆるところで目につく「おにぎり専門店」。本格的な秋の行楽シーズンを前に、旬の具やこだわりの素材を使った豪華なおにぎりが続々と登場している。まずは、主なチェーン店と注目商品を紹介する。
■おむすび権兵衛(カレッタ汐留店ほか)
牛肉と青唐がらし(170円)、さけときゅうりの夏むすび(170円)※期間限定
■ほんのり屋(東京駅構内の本店ほか)
牛タン青唐味噌むすび(270円)、松茸むすび(240円)
■おにぎり処 こんがりや(ecute品川店ほか)
刻みしそ梅おにぎり(160円)、昆布生タラコおにぎり(180円)
■越後屋甚兵衛(池袋東武店ほか)
紀州梅(189円)、日高昆布(241円)
最近は話題の新スポットに、わざわざ業態を変えて出店するチェーン店まである。
東京スカイツリータウン内施設のソラマチには、上記の「おむすび権兵衛」が「ファーマーズキッチン」としておにぎりと一緒に産直野菜を使った惣菜を提供している。また、同施設内には持ち帰り寿司店の「京樽」が展開するおにぎり専門店「おむすび重吉」のリニューアル店、「俵屋重吉」もテナント入り。ツリーの高さに掛けた634gの「スーパージャンボおむすび六三四」を限定販売し、1日100個を売り上げる人気商品になっている。
もともと、“ハイスペック”を誇るおにぎり専門店は駅ナカの新規フードビジネスとして10年前にお目見えした。かつてJR東日本の系列会社(ジャイアール東日本フードビジネス)が仕掛けた「おむすび処 ほんのり屋」の立ち上げに携わった飲食店コンサルタントの白根智彦氏がいう。
「あの当時はおにぎり専門店は皆無でしたし、ほんのり屋はJAと組んだので高品質なブランド米を使ったおにぎりを握れば、必ず売れる自信がありました。その読み通り、どれだけ陳列しても2時間以内になくなり、また握るという状態が続きました」
しかし、競合店の乱立とともに、素材の良さだけで差別化するのが難しくなってきた。さらに、おにぎりの高品質化には、コンビニの存在も無視できなくなった――と白根氏は続ける。
「大手コンビニは優秀な製造業者を抱え込んで味の追求をしているので、専門店のおにぎりと変わらないレベルになっています。それでも専門店には“握りたて”の温かさというメリットがあったのですが、いまやミニストップのように店内で炊いた米で握る『手づくりおにぎり』を出すコンビニまでありますからね」
ここまで過当競争になると、変わり種の具で勝負するしかないのか。
「あまり奇をてらった商品は逆効果。ここは原点に立ち返り、鮭やたらこといった王道の具を見直し、温かさだけでなく保存食としても長時間おいしく食べられる素材の厳選を続けない限り、専門店といえども淘汰されていくと思います」
少子高齢化やライフスタイルの変化によって、惣菜(中食)市場は8兆円規模にまで膨らんだ。しかし、おにぎり1個をめぐるシェア争いは、ますます熾烈を極めている。