みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイ ブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある同氏が、「古いコミックや、マンガ雑誌は、まあまあいい値段がつけられる」という蔵書の買い取り価格について考える。
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たとえば石ノ森章太郎先生の名作『サイボーグ009』は、講談社版の全7巻のうち、第7巻だけがやけに発行部数が少なく、初版で7巻の入った全7巻セットは、この15年間で3セットしか出回ったことがないという。その買い取り価格は25万円。いやいやすごい高価格商品である!
また、『週刊ポスト』と同じ小学館の『ドラえもん』も初版に限っていえば、第1巻一冊で2万円以上の買い取り価格がつく。赤塚不二夫氏の『ひみつのアッコちゃん』は全3巻セットで3万2000円だ。
しかし、それよりも高価格で取引されているのが、あまり知られていない、いわば無名といってもいい作家のコミックスだった!! とにかく発行部数が少なく、マニアックな内容が好事家にはたまらないのだという。マニアックな内容とはどんな内容かというと、
●決して達者ではない、ちょっと稚拙な絵。
●最初っから最後まで、緩急なく全力疾走するかのようなストーリー。
●やけにセンスのないタイトル。
ある意味、日本マンガ史に埋もれるべき運命の作品に、マニアはマニアック魂をググッと刺激されるらしいのだ。
逆にあまり買い取り価格が高くないのが、『巨人の星』全19巻セット、『あしたのジョー』全20巻セット。両作品とも初版が美品で1万2000円と、かろうじて買い取り価格が表示されるって具合だ。誰もが知っている人気作品でも買い取り価格が表示されない(つまりひとからげで計算)ことも多いのだ。
●コミック本の買い取り価格の事例
【タイトル/作家/巻数/買取価格】
『学園ポルノ伝』/福原秀美/全12巻セット/2万5000円
『失神デスマッチ』/門井文雄/全1巻/1万2000円
『吸血女バイオレット』/高園寺司/全1巻/3万5000円(非貸本)
『侵略ガニ』/眉月はるな/全1巻/2万円(非貸本)
※週刊ポスト2012年9月21・28日号