野球の世界一決定戦・WBC監督待望論も出るなか、みずからの講演会で「絶対にやらない」と断固拒否の姿勢を示した落合博満・中日ドラゴンズ前監督(58)。8月には顔面神経麻痺で救急搬送されるなど、健康問題に不安を抱えているとはいえ、なぜ、頑なまでに代表監督という名誉ある地位に難色を示したのだろうか。スポーツ紙野球担当記者はこう解説する。
「落合氏は、プロ野球選手は球団との契約の上に成り立っている、と考えている。まず、球団との契約をきちっと履行した上で、全日本として活動するぶんには構わないと思っているが、今のサムライジャパンは、常に急造チーム。それに、仮に故障しても何の保障もされない。そんな環境では、賛同できないのです」
事実、石井弘寿(元ヤクルト)はメジャーで通用する力を持っていながら、2006年のWBCで肩を壊し、再起することなく、昨年引退した。“世界一”というスポットライトばかりに目を当てがちだが、落合氏はそのウラの事象に着目しているのだ。
実際、9月2日の群馬での講演会で、落合氏はこう話している。
「(世界大会を)やるぶんには一向に構わない。でもきちっとした、どこからも突かれないような方法論取るべき。何年後にWBCや五輪があるとわかっているんだから、よその球団に迷惑を掛からないように、WBCや五輪に行けるような若い連中、メンバーを育成するために、ナショナルチームという形でなくても、1チーム40人から50人くらいのメンバーで組織作りをしましょう、と何回も提言したことあるんです。
ところが、俺が先に行き過ぎているのか、周りがなにも考えていないのかわからないんだけども、すべて却下。俺のいうことはすべて却下。ダメなの」
決して世界大会に反対しているのではなく、あまりにもその場しのぎのチーム作りに異を唱えているだけなのだ。しかし、その言動は“造反”と捉えられてしまう。2009年のWBCで中日の選手がメンバー入りを辞退した際も、メディアの批判の矛先は落合氏に向かった。
このような状況で、今さら手のひらを返したようにWBCの監督に担ぎ出されても、落合氏が断るのはごく当然なことかもしれない。