包括ケアをしてくれる有料老人ホームは入居する際に高額な一時金が必要。一方で費用が安い特別養護老人ホームはなかなか入れないのが現状。そこで最近注目を浴びているのが「サービス付き高齢者向け住宅」(以下・サ付き住宅)。
現在、65才以上の人口は3000万人。そのうち300万人が認知症。つまり、10人に1人が認知症という計算だ。
高齢者住宅の入居相談などを行っているタムラプランニング&オペレーティングの代表取締役・田村明孝さんはこう指摘する。
「現在、認知症になっていない人の多くは“私は大丈夫”と思っています。サ付き住宅を選ぶ段階で “今、自立していて食事も作れるので最低限のサービスで充分”というかたも多くいます。しかし、あまり楽観視せず、3年、5年と経過したときに体調が変化したり、脳梗塞で倒れたりといった状況を考えておいたほうがいい。
それでも“老人ホーム”といったジャンルに抵抗のあるかたは、まずは一時的にサ付き住宅を使うのもいいのでは。体調の悪いときに行って、食事のサービスをお願いするなどすれば施設への理解が深まるうえ、ひとりでいる人は安心感もあると思いますよ」
『後悔しない老人ホームの選び方がわかる本』(講談社)の著者で、介護コンサルタントの中村寿美子さんも高齢者の意識改革が必要だという。
「80才のかたが相談にいらしたので、具体的な入居時期をうかがったところ、“いやだ、年取ったらね”という返事。そう言われるだけあって、とても若々しいのですが、年齢的には、いつ何があるかわかりません。特におひとりで暮らしているかたは、もっと前向きに検討するといいと思います」
中村さんは施設を海外旅行にたとえ、有料老人ホームはパック旅行、サ付き住宅は個人旅行だという。
「有料老人ホームは生活支援サービス、介護サービス、すべてが含まれ、職員が24時間、家族のかわりにお世話をしてくれます。
しかし“個人旅行”であるサ付き住宅は最低限のサービスしかついていないため、食事も医療も介護もすべて自分で決めなくてはいけません。60代など若いうちはいいのですが、だんだん年を重ねて体が動かなくなった、病気になった、自分でできないことが多くなったときに大変な思いをする可能性があります。その点も考慮しておくといいでしょう」
※女性セブン2012年9月27日号