ロンドンのギャラリーで開かれた「ザ・グレート・ウォール・オブ・ヴァギナ」、直訳すれば「女性器の偉大なる壁」という展覧会が、あまりの盛況ぶりで、当初より開催期間が延期され、およそ1か月で数千人が訪れた。
展示されたのは、世界20か国571人分の女性器を石膏でかたどったレリーフだ。イギリス人やフランス人、イタリア人、ドイツ人、アメリカ人、オーストラリア人、そして日本人など、世界の18~76才の女性たちがこのプロジェクトに協力した。真っ白な石膏で実際の女性器から“再現”された陰影豊かな作品は、どこまでも精巧に作られ、同じ形状のものは何ひとつない。
展覧会に来ていた女性数人に作品の感想を聞いたところ、「こんなにたくさんの形があるなんて、驚きました」(45才)という声のほか、「実は自分の性器の形にコンプレックスを持っていたんです。でも、これを見て、そんなこと、気にする必要はないんだって勇気づけられました」(28才)という声が聞かれた。
彼女たちに共通するのは、それまで他人の女性器を見たことがなかった、ということ。作家の中村うさぎさん(54才)は、この女性器展についてこう語る。
「普段から自分の女性器を意識している人は少ないかもしれないけど、じゃあ、いざ“他人と同じなの?”“私だけが変なんじゃないか”と考え始めると不安になる──女性器ってそういう存在じゃないの? だから“展覧会がある”という情報自体がきっかけになって、興味を持つ女性が殺到したんだと思う。情報が少ないから、“私のって…”と人知れず悩んでいた人にとっては、本当に千差万別であることがわかっただけで、救われたと思う」
実は制作者のジェイミー・マッカートニーさん(41才)の作品の意図もそこにあった。
「以前、女性器だけでなく、男性の性器や女性の胸を模型にした展覧会を開いたことがあったんです。そうしたら女性たちの興味を最も引いていたのが女性器だったんです。
イギリスでは陰部の美容整形が流行していますが、もっときれいになりたいとか、積極的な理由ならともかく、ポルノ映画などを見て、“自分の性器は普通じゃない”と思い込み、自信をなくして悩んだ結果、整形に走る人も多いことを知りました。だから、女性器には“普通”なんてないと、女性たちに知ってもらいたかった」
※女性セブン2012年10月4日号