世界でトップニュースとなった「9・18」の反日デモ。翌19日になると中国の公安当局はデモの参加者の拘束を発表し、一斉に沈静化に向けて動き出した。中国に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏が解説する。
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中国が「国恥の日」と定める9月18日のデモこそが鍵ーー。
前回の原稿で書いた通り、反日デモの勢いが失われたと判断した中国政府は一転して抑え込みへと舵を切った。が、実は、18日のデモが勢いを失ったことの裏側には当局の必死の工作があった。
中国にとって都合が良かったのは18日が祝祭日と重ならなかったことだ。ウィークデイであれば、仕事や学校という組織を通じて党の毛細血管のような命令系統が機能するからだ。
例えば学校であれば、教育部の系統が機能する。反日デモに参加しようと呼びかけている学生があれば呼び出して教授に注意させるといった具合だ。就職に響くとなれば効果は絶大だ。
また工場であればその工場の書記の責任者が効果を発揮する。万一、その工場からデモに参加して違法行為を働いた者があれば、その人物が裁かれるだけではなく書記も地位を失うという連帯制度なので、それぞれの長が必死に止めるのである。
さらにアナログな対応では、横断幕をつくるのに必要な大きな赤い布を買っていく者や大量のマジックを買い込んだ者、また通常のサイズではない大判のコピーを賛成するような店にも狙いを付けて、訪れる者の後をつけて警察署に呼び出すというやり方も採られている。
現在ではネットの掲示板や微博(ミニブログ)にデモの呼びかけを出した者を特定することも簡単だという。
このように当局が危機感を募らせ、一気に抑え込みに動いた背景には、やはり野放しにすれば政府への怒りに転嫁しやすく、その規模も中国の治安のキャパを越えてしまう可能性を秘めていたからだ。
一つの省に一つのデモ程度であれば別の都市から武装警察部隊を異動させて厚い備えができるが、今回の広東省のデモのように深圳市、東莞市、広州市という近い都市で比較的大規模なデモ――というより暴動だった――が起きれば互いに応援を要請することもできなくなる。それゆえ、最終的にはデモ隊に向け催涙弾を撃つしかなかった、というわけだ。