約6か月前に発売された一般チケットはわずか5分で即完売。約2万7000人を動員する予定だった。
9月16日──20年前のその日にデビューした安室奈美恵(35才)は、生まれ育った沖縄の地で、たった一夜限りの20周年記念ライブを計画していた。
そのライブ当日の2日前。那覇市内から車で約30分のところにある海沿いの宜野湾海浜公園では、着々と屋外ステージが組まれていた。
『a walk in the park』、『How to be a Girl』、『Chase the Chance』…。降ったりやんだりするスコールのような雨の中、安室のハスキーボイスが漏れ聞こえる。ピンク色の半袖Tシャツにスキニーのジーンズ、足元はヒールのあるパンプスでリハーサルを行っていた。「姿勢がピンとすると、気持ちも視界もいろんなものが変わる気がする」からと、いつも、ヒールを履くのが彼女のポリシーなのだ。
しかし、そのリハーサル中の午後2時過ぎになって、ライブ中止を決定せざるをえない事態になった。中心気圧900ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は55メートルで最大瞬間風速80メートル。猛烈な台風16号が、ライブ当日の沖縄を直撃することがわかったのだ。
11月からスタートする5大ドームツアーは、5会場8公演で約34万人動員予定となり、これは女性ソロ歴代トップ。20周年を迎えた彼女の不動の人気が伺える。
この20年、彼女にはさまざまな出来事があったが、この節目の日に、もう一度、原点に立ち、新たなスタートを切るための“けじめ”をつけたかったのかもしれない。
「デビュー20周年の日に沖縄でライブができることは、ごほうびのような気がしてすごくうれしいんです」
そう言って、安室はその日を待ちわびていた。愛用中のバーキンには、ピンクと黄色のてるてる坊主をつけて…。しかし、その切なる思いは吹き飛ばされてしまった。誰よりも9月16日という日にこだわっていたからこそ、安室は延期ではなく、潔く中止という決断をした。
※女性セブン2012年10月4日号