50才を超えても30代に見える医師として大人気の南雲吉則(なぐも・よしのり)先生(57才)が、読者から寄せられた体に関する相談に答える。今回は、アルコールとの上手なつきあい方について。
【質問】
お風呂上がりのビールがおいしくて、毎日飲んでしまいます。週に一度は“休肝日”を作るといいと聞きますが、実際のところどうなんですか?(ホップルン・45才・主婦)
【南雲先生の回答】
確かに、お風呂上がりの冷たいビールは本当においしいよね。昼間、喉がカラカラになるほど一生懸命働いて、仕事が終わった後に飲むビールも最高! お酒は、少量であれば血液循環をよくしてくれるから、健康増進作用がある。祝い事の席などでは感情を解放できたり、コミュニケーションをスムーズにしたりと、人づきあいの上でも利点が多いものだから、“百薬の長”といわれることも納得だよね。
でもね、いいことばかりじゃない。主婦など、日中家にいる人は特に注意が必要! なぜって、昼間からひとりで飲むことができるから。“いつでも飲めちゃう”状況って、キッチンドランカーになりやすくて、とっても危険なことなんだよ。
外で働く人でも、仕事中は飲まない、体の調子が悪いときは飲まない、ときちんとコントロールできないなら、飲むのはやめたほうがいいね。アルコールって人間を崩壊させる一種の麻薬のようなもの。ぼくは“麻薬系”の飲み物と言っているよ。
血液の中にはさまざまな有害物質が流れているんだけど、それが脳に流れ込まないように、血管と脳の間には“血液脳関門”というものがある。そこを通過できるのは、糖分などのごく限られた栄養素だけなんだけど、アルコールやシンナー、ニコチンやカフェインなどは、その関門を簡単に越えて脳に到達するんだ。
これらはひとたび脳に到達すると、欲求が満たされたときに活性化して快感を覚える、脳の“報酬系”部分に作用して、すごく幸せな感覚を生じさせるんだよ。
この多幸感のせいで、またその幸せを感じたいと思って、やがて習慣性や依存性が表れる。そしてどんどん量が増えていって、やめると幻聴・幻覚といった禁断症状を起こすようになるんだ。
主婦であれば、日中ひとりでいるときに飲んじゃうとか、外で仕事をしている人が仕事の途中にも飲むなんてことがあれば、それはアルコール依存症の可能性があるね。それと、“飲まない日が一日もない”というのも、実は潜在的なアルコール依存症といえるんだ。本物の依存症に進行しないよう、生活習慣に気をつけてほしいな。
朝飲んでしまって仕事を休んだり、酔って正体をなくしたり、暴力を振るったりモノを壊したり…、なんていう行動が出てきたら、それはもう立派なアルコール依存症という病気だね。
その場合は、ヘタに家族内でかばったり尻ぬぐいをしたりしちゃダメ。身内がかばってくれることが、依存症にはいちばんよくないことなんだ。アルコールをやめる自立支援の組織や病院に委ねて、きちんと治療をする必要があるんだよ。
※女性セブン2012年10月4日号