中国で巻き起こった“反日デモ”――その目玉イベントのひとつが「日本車壊し」だ。パトカーだろうが、一般人が運転中だろうがおかまいなし。蹴ったり、石で窓を割ったり、屋根に乗ったり、ひっくり返したり、火をつけたり、やりたい放題である。
中国で走っている自動車の20%強が日本車とされる。当然だが、そのほとんどのオーナーは中国人だ。たまたま気に入って乗っていたのが日本車だからといって、同胞にぶっ壊されたのではたまらない。
そんな心中穏やかでない日本車オーナーたちにバカ売れしているのが、「私の日本車を壊さないで」というメッセージが込められた自動車用のステッカーだ。上海のカーステッカーの卸業者に聞くと、「毎日1000枚以上売れている。日本が島を国有化してから売り上げは5倍に増えたよ」と“国難特需”でホクホク顔。価格は大きさによるが10~25元(約130~325円)ほどだ。
書かれている文句も、デザインもバラエティに富んでいる。そのいくつかを紹介しよう。
「別我、日本車、中国製造(僕を壊さないで。日本車だけど中国製です)」
たしかにその通りだ。しかし、これではカッカしているデモの参加者たちをなだめられるか微妙なところ。
「車是日本車、心是中国心(車は日本車だけど、心は中国です)」
理屈じゃなく、デモ隊の感情にストレートに訴える作戦のようだ。
「本人買車在前 日本犯賤在后 従今以后 抵制日貨(本人がこの車を買ったのは日本がひどいことをする前のこと。今から日本製品ボイコットを始めます)」
反省型。あるいは改悛型。
「我去収復釣魚島了(この車で尖閣を取り返しに行ってくるわ)」
かなり勇ましい。こういわれれば、デモ隊も通さざるを得まい。
「中国我愛イ尓(中国、愛してるよ)」
必死すぎて、少し笑えてきます。
※週刊ポスト2012年10月5日号