『メルマガNEWSポストセブン』では、ビートたけし、森永卓郎、勝谷誠彦、吉田豪、山田美保子…など、様々なジャンルで活躍する論客が、毎号書き下ろしで時事批評を発信する。9月21日配信の32号では、経済評論家の森永卓郎氏が登場。橋下徹・大阪市長率いる日本維新の会がもし政権を取ったら、日本経済はどうなるのか…? 森永氏が予測する。
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仮に日本維新の会が政権を取ったとしたら、日本がどのように変わるのかということは、意外に論じられていない。そこで、今回は日本維新の会が掲げる「維新八策」をもとに、経済面を中心に一体何が起きるのかを考えていこう。
維新八策の理念は、明確だ。一言でいえば、市場競争主義だ。ものごとは市場競争で決める。競争に参加することのできない“真の弱者”は守るが、敗者は守らない。負けたのは、努力が足りなかったからで、自己責任ということになる。
維新八策の記述をみよう。「競争力を重視する自由経済」、「産業の淘汰を真正面から受け止める産業構造の転換」、「イノベーション促進のための徹底した規制改革」。こうした表現だけからでも、徹底した市場競争を経済に持ち込もうとしているということが、お分かりいただけよう。その一つの帰結が、「TPP参加、FTA拡大」なのだ。
TPPについては、ここでは詳しく論じないが、関税撤廃ということになれば、日本の製造業には数%生産増の効果があるが、農業は壊滅的な打撃を受ける。米の生産が9割減、畜産が75%減など、農業生産の3分の2が失われ、食糧自給率は現在の40%から14%に下がるというのが農水省の推計だ。しかし、維新は、それでよしとする考えのようだ。「産業の淘汰を真正面から受け止める産業構造の転換」を目指すのだから、価格競争に勝ち残れない者は、市場から退出すべきなのだ。
これだけでも極端な弱肉強食社会になるのだが、維新八策は、もっとすごいところを目指している。「グローバル化する知識経済に適応できる産業構造への転換」をすることで、「為替レートに左右されない産業構造」を実現しようと言うのだ。「貿易収支の黒字重視一辺倒から所得収支、サービス収支の黒字化重視戦略」という産業戦略なのだ。