大手スーパーの価格競争が止まらない――。
6月にイオンが食品、日用品など1000品目の値下げをしたほか、西友が夏の500品目に続き、9月には700品目の“拡大値下げ”を発表。そして、ダイエーが9月22日からスタートした創業祭を機に、1700品目を平均10~20%、最大で47%値下げするとぶち上げた。対象商品の一例を見てみよう。
■森永ビヒダスヨーグルト(450g)218円→148円(32%引き)
■ホーユー ビゲン スピーディカラー乳液 498円→298円(40%引き)
■ニチレイ甘えびシューマイ(12ケ入) 338円→178円(47%引き)
エブリデー・ロー・プライス(EDLP=毎日安売り)の戦略はいまやスーパーの生命線ともいえるが、ここまで各社が値下げ幅を拡大している要因は、ひとえに長引く消費不況によるところが大きい。
流通アナリストでプリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之氏が解説する。
「1世帯あたりの平均所得金額は538万円で過去10年間の最低を更新しています。ただでさえ消費者の財布の紐が固くなっているうえに、コンビニやデパ地下の好調ぶりもあって、スーパーは既存店ベースの売り上げ伸び率が10年連続で減少。値下げで失った利益は客数の増加で補うしかないという負のスパイラルに入っているのです」
しかし、度重なる値下げでスーパーの経営体力自体が落ちているかというと、そんなこともない。鈴木氏が続ける。
「イオンは粗利益が50%近く取れるPB(自主企画)商品のアイテム数を拡大させてNB(メーカー)商品の値下げによる利益率低下をカバーしています。また、西友は提携する米ウォルマートの徹底した販売促進費の削減で人件費などを圧縮。そこで浮いた経費を安売りの原資にしています。イトーヨーカ堂も社員半減を掲げるなど、みな生き残り策は考えています」
特にPBは各社とも拡販の方向性を打ち出している。ダイエーもNBの売り場を縮小させて、PBの陳列スペースを標準店で3割広げる予定だ。
「今後はより“製造小売業化”したスーパーが勝ち残る。つまり、製造過程の『川上』に関与することで、価格や利益率を自由にコントロールできるわけです。そういう意味ではPB商品は今後もますます増えていくでしょう。でも、誰もが知っているNB商品、洗剤やサランラップなど日用品の値下げも同時に行っていかないと、顧客に効果的な安さを訴えることができなくなります」(鈴木氏)
電気代の値上げや社会保障費の負担増、消費税増税……。スーパーを取り巻く環境はますます厳しさを増していく。このまま小売業の代表であるスーパーが果てしない値下げ合戦を続ければ、デフレ脱却の道のりは一層遠のいていく。