誰かがあくびをしているのを見ると、自然と自分もあくびをしてしまうことがよくあるが、これはいったいどういうことなのか?『ホンマでっか!?TV』でお馴染みの脳科学者・澤口俊之氏が脳科学の視点で分析する。以下は澤口氏の解説だ。
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今年の夏は暑い日が続きましたが、外気温が高いため、体温調節がうまくできず熱中症になった人も多くいました。「体温」は、脳の温度とも密接に関係しています。体温が高くなり、血液の温度が高くなると、全血液の20%がめぐる脳の温度も高くなってしまいます。
以前は、脳の温度は一定に保たれていると思われていたのですが、近年、動物実験、ついでヒトでの実験により、脳の温度がプラスマイナス2℃程度変化することが判明しました(これも脳の領域によります)。
暑いと頭がボーッとするのは、脳の温度が高くなっているせいです。風邪などで高熱を出したときも同じ理由でボーッとします。
脳の温度を下げる方法はいくつかありますが、無意識にする「あくび」が特効薬です。「あくび」は、ホメオスタシスの働きで、脳への酸素を増やす役割と、脳を冷やす作用を持っていることが近年になってわかってきました。
「あくび」が伝染するのは、「今、みんなの脳の温度が高くなって注意力などの脳機能が低下している。今、敵に襲われたら危ない。だからみんなで脳の温度を下げろ」という、外敵に対する防御(加えて社会的協調性や共感)のためと考えられます。
ただし、「あくび」で脳の温度を下げるのには限界があります。そんなときは、冷たいものを口に含むのが効果的です。夏場にアイスクリームやかき氷が欲しくなる理由は、その辺にもあるのでしょう。
さて、私たちの脳や体によく、作業効率が上がる外気温は何度でしょうか?
答えは、“25℃程度”です。
本来、夏場もオフィスや勉強部屋などは、25℃くらいにするとよいのですが、屋内と屋外の温度差が大きくなると、体温調節がうまくいかなくなります。そこで、体的にも経済的にも優しい屋内の温度は、28℃程度が適当だといえるのです。
※女性セブン2012年10月4日号