過去には2006年の村上ファンド事件や、日経社員、NHK職員のインサイダー取引事件があったが、今年春から夏にかけて、増資案件をめぐるインサイダー事件が5件続いて摘発された。「みずほフィナンシャルグループ」や「国際石油開発帝石」、「日本板硝子」の増資では、いずれも野村證券が情報漏洩に関与し、強い批判にさらされている。
インサイダー取引は決して許されるものではない。しかし、投資に勝利するには情報が鍵を握ることもまた事実。合法的に、われわれ一般投資家が「情報強者」になるにはどうすればよいのか。
『インサイダー取引で儲ける人たち』(アスペクト刊)の著者・高島ゆう氏は「インサイダー・コバンザメ」になることを勧める。
「例えばインターネットの会員制の掲示板には、企業の内部情報が記されているところがあるが、これらは匿名なので情報漏洩には当たらない。投資家同士がネットで連携し動かす金額も大きくなれば、“ネット仕手筋(*注)”としても機能します」
ネットの玉石混淆の情報のなかから、“火種”になりそうな情報を選び、その火元に接近するのがコバンザメたる所以。ここで活用するのが、ツイッターやフェイスブックなどのSNSだ。
「フェイスブックは実名で、勤務先や部署名まで公開している人も少なくない。その内容も信憑性が高い。最近はフェイスブックとツイッターを連動させている人も多いから、リアルタイムの動きもわかる。これは株取引にとっては非常に重要なことです」(同前)
実際に高島氏が目にした例では、こんなものがあったという。
<会議の連続でしんどい。でも乗り越えれば、会社は飛躍的な進歩を遂げる>
<もうすぐ決算……会社の雰囲気が落ち込んでいる>
また、某メーカーの人間が、
<今度のCMからメインキャラクターが変わる! まだいえないけど大物です>
とつぶやいていたこともあるという。これらの情報は、株取引の大きなヒントになる。
最近は、こうした地道な情報収集を積み重ね、大きなリターンを得ている一般投資家も出現しているという。
【*注】ネット仕手筋/仕手筋とは、人為的に相場を操作して利益を出すことを目的に、投機的売買をする者のことを指す。そのような意図を持った者がネット上の掲示板やチャットなどで情報交換をし、投資先を決めて一斉に売買するなどして、相場を動かして利益を得ること。
※週刊ポスト2012年10月5日号