民主党のある幹部は、「橋下ブームは一過性のものだ。すぐ人気はしぼむ」と“希望的観測”を語った。同じような論調の報道も増えている。しかし、独自取材による緻密なデータを用いた選挙予測に定評がある政治ジャーナリストの野上忠興氏の分析では、橋下維新の勢いは民主党幹部の読みとは逆にますます伸びており、「第二党」に躍り出る可能性が高いという。
9月上旬、永田町でコピーされ、回覧されたある世論調査結果に、多くの政治家たちが息を呑んだ。
■次期首相にふさわしい人物 橋下徹:11.5%・石原慎太郎:10.8%・石破茂:8.9%・野田佳彦:8.7%・岡田克也:6.5%・前原誠司:4.6%・小沢一郎:3.6%・渡辺喜美:3.2% ・小泉進次郎:2.6%・石原伸晃:2.1%・谷垣禎一:1.8%・細野豪志:1.6%・小池百合子:1.0%・誰もいない:26.9%
この世論調査では支持政党についても聞いており、民主党13.5%に対して「支持政党なし」が58.7%にものぼっていた。野上忠興氏は、これこそが来る総選挙の構図を示すと指摘する。
「既成政党に対する“NO”の声が非常に大きくなっている。民主党に裏切られたという思いはもちろん、自民党の『解散するなら増税に賛成する』という態度にも、有権者は大きな怒りと不信感を持っている。民自公の談合政治に、心の底からうんざりしているということだ。
総選挙ではそれを反映して、“このどうしようもない既成政党に政治を続けさせるのか否か”が一番の争点になるだろう。国民の怒りは3年前の政権交代選挙の時よりも大きい。政治不信の高まりから棄権する人も増えるかもしれないが、それを差し引いても70%を超える高い投票率になる可能性を秘めている」
注目されているのは、橋下徹氏本人の出馬だ。本稿執筆時点ではまだ明確な態度を表明していないが、野上氏は「橋下氏は、自身が出馬しなければ国政を動かす大きなムーブメントにならないと自覚している」と見る。
では、日本維新の会は、どれほどの「ムーブメント」を起こすのか。永田町では維新との連携や選挙協力をめぐって激しい駆け引きが行なわれているが、今回は、維新が全国に候補者を独自に立てた場合、どこまで議席を獲得できるのか、その“ポテンシャル”を分析した。シミュレーションの結果をそのまま言えば、日本維新の会は、小選挙区77議席、比例区41議席の合計118議席を獲得し、「第二党」へと躍進するという。
もちろん候補者も決まっていない段階の予測なので、あくまでシミュレーションとお考え頂きたいが、みんなの党(22議席)、減税日本(10議席)も、現有議席から大きく伸ばす。「国民の生活が第一」(17議席)や維新とあわせ、「第三極」が国政で大きな勢力になる。
自民党は根強い地盤を持つ四国・九州地方を中心に173議席まで回復するものの、公明党(26議席)を合わせても200議席に届かず、過半数にはほど遠い。
民主党は90議席と惨敗し、現有議席の半分以下に転落しそうだ。
なお、今回は直近のデータから勢力変化をシミュレーションするにとどめたが、各選挙区の最新情勢については引き続き取材しており、その分析結果については近くお伝えしたい。
シミュレーションを行なった野上氏はこう語る。
「民主党と自民党が国民不在の党首選をやっている間にも、有権者の心は既成政党からどんどん離れている。そのため維新に有利な状況だ。それは手元にある各地の選挙情勢調査や世論調査での比例投票先データから見ても明らかで、小選挙区では各道府県の1区や2区など都市部を中心に、維新が議席を獲得すると見られる。比例区でも、ブロックによっては自民党を凌駕している」
※SAPIO2012年10月3・10日号