それはそれは、素晴らしいゴチャゴチャ感――。9月27日、新宿駅東口に華々しくオープンするビックカメラとユニクロの共同店「ビックロ」は、異業種コラボレーションの“珍しさ”を魅力に変えて集客力に結び付けようと、さまざまな仕掛けが用意されている。
■ビックポイントがクーポン券となってユニクロ商品で利用できる
■暖房器具コーナーで発熱保温下着「ヒートテック」を販売
■ユニクロの衣料品をまとったマネキンが掃除機を手にしている
■カメラや携帯電話などの家電とコーディネートできるファッションブースを設置
■ビックカメラ×ユニクロの企業コラボTシャツを限定販売
ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が「国内市場は元気がない。商品を選ぶ前に、店を選んでもらうことが大事」と話したように、長引く消費不況による販売力の低下は、斬新なマーケティング戦略で定評のあるユニクロさえも苦しめていたのだ。それがビックロ誕生のきっかけとなった。
これまでも小売りや外食企業を中心に、コラボ展開は珍しいことではなかった。2008年にローソンがマツモトキヨシと業務提携をして共同店舗を出店したり、2010年にはモスバーガーとミスタードーナツの共同事業店舗「MOSDO」がオープンしたりと、さまざまなタッグが組まれてきた。
残念ながらローソンのコラボ構想は実験店の収益が思うように上がらず、暗礁に乗り上げているが、「ナチュラルローソン」は音楽プロデューサーの小林武史氏が代表を務める「food kurkku」とのコラボ店舗を渋谷区内に出店するなど、ローソンの協業意欲は変わらず旺盛だ。
では、コラボ店舗の効率的な運営手法やブランド力を持続させるための秘策はあるのか。日本ブランド戦略研究所社長の榛沢明浩氏に聞いた。
「例えば、コンビニとガソリンスタンドならば、同じ駐車スペースを利用して消費者は買い物をしたり、空いた時間にガソリンを入れたりできるので、店舗オペレーションの効果化が見込めます。また、両社の強みをいかした共通の販促手法の相互利用ができることも大きいと思います」
ビックロの場合も、家族で来店すれば各々が家電とアパレルに分かれて買い物ができる「回遊性」が生まれるという。もちろん話題性は申し分なく、派手な販売戦略が相互利用できるのはいうまでもない。
では、このままビックロブランドは長期的に育っていくのか。
「ビックカメラもユニクロも広く大衆に支持され、既存のイメージが確立されているので、ゼロから新業態を立ち上げるよりもリスクは少ないと思います。その中から徐々に両社のシナジー効果が発揮できる新しいマーケティングスタイルや斬新な共同開発商品などを増やしていけば、第二、第三のビックロを立ち上げることも十分可能だと思います」(榛沢氏)
まさかビックカメラの次は、ヨドバシカメラとの“ヨドクロ”という組み合わせはないだろうが、ユニクロのコラボ展開は成熟化・マンネリ化に陥る小売業界の未来を占う意味で大きな試金石となるはずだ。