ビートたけし、森永卓郎、勝谷誠彦、吉田豪、山田美保子…など、様々なジャンルで活躍する論客が、毎号書き下ろしで時事批評を展開する『メルマガNEWSポストセブン』。9月21日に配信された32号では、森永卓郎氏が登場。橋下徹・大阪市長率いる、日本維新の会の雇用政策を分析する。
* * *
日本維新の会の掲げる経済戦略で大きな問題なのが、解雇規制の緩和だ。維新八策には次のように書かれている。「民民、官民人材の流動化の強化。徹底した就労支援と解雇規制の緩和を含む労働市場の流動化(衰退産業から成長産業への人材移動を支援)」。
現在の日本では、正社員の解雇について、きわめて厳しい規制がかかっている。それを緩和して、解雇がしやすいようにしましょうと言うのだ。確かにそうすれば、企業経営の自由度は上がる。
問題は、それで経済がどのような影響を受けるのかということだ。ヨーロッパにはデンマークとオランダという雇用面での2人の優等生がいた。リーマンショック前の2007年の失業率は、デンマークが3.7%、オランダが3.5%と、他の欧州諸国と比べると半分以下という優秀さだった。しかし、低失業の理由は異なっていた。デンマークは解雇規制を緩和し、解雇されたあとの就職支援を政府がしっかりやるという戦略だった。一方、オランダは、厳格な解雇規制を続けながら、雇用形態を多様化し、労働者が転職や副業をしやすいようにして、失業への転落を防いでいた。
そしてリーマンショックから3年たった2011年の失業率は、デンマークが7.4%に対してオランダは4.4%だ。解雇規制の緩和は、経済全体が大きな痛手を受けたときには、雇用を劇的に悪化させるという、考えてみれば当たり前のことが起こったのだ。
市場競争強化の経済政策で、経済全体が悪化するという証明をするのは難しい。しかし、確実に起きることは、転落していく人が増えて、弱肉強食化が一気に進むということなのだ。