東日本大震災などを踏まえ農林水産省は2012年8月30日に、災害時の食料安定供給を図る「緊急事態食料安全保障指針」を策定する方針を発表した。
物流に関する機能維持施策等に加え、各家庭にも「最低でも2週間分の食料品を備蓄することが望ましい」「3日分程度は、包装米飯、缶詰、飲料水等の平素から手に入れやすく、ライフラインが停止している場合でもすぐに食べることができるものを併せて備蓄することが望ましい」などの他、具体的な備蓄量の目安も定める予定という。
震災直後は物流が寸断されるなどの供給不足から、小売店などで「1.5L以上のペットボトルは、お一人様3本まで」といった販売制限があったこともあり、今も水を定期的に箱買いしているだけでなく、買い置きの量を増やしたり、震災を機にウォーターサーバーを導入したという家庭も。
重いペットボトル飲料を運ぶのは負担が大きく、宅配サービスを利用するケースでも、忙しい時などはつい買い置き残量が減っていて、“今、災害が起きたら”と不安になることがある。その一方でウォーターサーバーの場合は、専用サーバーのレンタルと合わせて定期宅配契約をするサービスが多く、使ってみると「温水・冷水が常に使えるのは意外と便利。もっと早く使えば良かった」という人が多いようだ。
国内で市販されている容器入り飲料水は、農林水産省の「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」によって以下の4つに区分されている。
【1】ナチュラルウォーター:特定の水源から採水された地下水を原水とした、加熱や濾過などの殺菌を行なっただけのもの
【2】ナチュラルミネラルウォーター:ナチュラルウォーターのうち、鉱化した地中でミネラル分が融解しているもの
【3】ミネラルウォーター:ナチュラルミネラルウォーターを原水として、複数の原水を混合したり、ミネラル調整などを行なったもの
【4】ボトルドウォーター:地表水や水道水などを水源としたもの
【1】~【3】がいわゆる「ミネラルウォーター」と呼ばれているもので、コンビニなど小売店で販売されている水はこのタイプ。一方ウォーターサーバーでシェア上位のアクアクララやクリクラなどは、地下水を水源としない「ボトルドウォーター」の区分だ。
嗜好品ではないが、飲料水にも人それぞれ好みがあり、硬水と軟水を飲み分けたり、好みの水を取り寄せる人も。そうした“こだわり”派にとっては、ウォーターサーバーの導入は「自分好みの水」を探す手間も大きいかもしれない。
そうした点で便利なのは、市販のミネラルウォーターの販売元がウォーターサーバーのサービス事業をしているケースで、手軽に味の確認ができる。例えば国内のミネラルウォーターシェア1位の「サントリー天然水」は、ウォーターサバーレンタルと定期宅配サービスを首都圏で展開、ナチュラルミネラルウォーターの水質だけでなく、オートクリーンシステムでの雑菌対策や5段階設定の温度調整が可能など、ウォーターサーバーの機能もユーザーの支持を集めているようだ。
通常時に2人暮らしの家庭で消費する飲料用の水は1か月で約25L程度だが、災害時に生活用水として使用する分を含めた目安は、1人1日3Lを基準にストックがあれば安心といわれている。普段飲みつけている水が、安心で飲みやすい味であり、非常時にそうした水が確保できていることで、減らせる心配もあるだろう。震災から1年半が経過した今、家庭の水ストックについて改めて考えてみたい。