消費税増税の法案が成立したが、家計にのしかかる負担増はそれだけにとどまらない。2015年に消費税が10%に引き上げられるまでに、様々な増税、保険料値上げが待ち受けている。経済アナリスト・森永卓郎氏が解説する。
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野田佳彦総理の思惑通り、消費税の増税法案が成立しました。2014年4月にまずは消費税率を8%に、2015年10月には10%まで引き上げられる見通しです。それにより、日本が恐慌に突入する恐れが、かなり現実味を増してきたとみています。
政争の道具とされたこともあり、消費税引き上げばかりに目を奪われがちですが、実は国民にのしかかる負担増は消費税だけではありません。住民税の増税、厚生年金保険料の引き上げ、復興増税などなど、他の負担増が消費税の段階的引き上げとちょうど重なっていくことが一つの理由です。
具体的にみてみましょう。まず、今年6月から住民税の年少扶養控除が廃止になりました。これまで、0~15歳の子供のいる納税者には、子供1人につき33万円の控除が認められていましたが、それがなくなった。住民税は一律10%なので、子供が2人いる家庭では年間6万6000円の負担増になります。
それから、厚生年金の保険料率はすでに毎年0.354%ずつ上がっており、今年の9月分からは16.766%になります。しかも、今後も毎年上がり続けるわけで、消費税が10%になる2015年10月までに、都合3回アップする予定です。
健康保険料についても、大手企業の健康保険組合では、保険料率を引き上げるところが続出しています。中小企業が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料率も、このところ毎年ほぼ0.5%ずつ引き上げられている。そのため、今後も3年間で1.5%程度引き上げられるのは確実だと思われます。仮に保険料が1.5%上がったとすると、そのことによる負担増は3万7500円になります。
さらに、復興増税がスタートします。その中身は、まずは所得税の増税。来年1月から25年間にわたり、納税額に2.1%上乗せされる。住民税も対象になり、こちらは頭割りで、2014年6月から年収に関係なく一律で年間1000円が増税され、それが10年間続くことになります。
もう一つ、忘れてはならないのが、電気料金の値上げです。東京電力の電気料金は10月から8.46%アップが決まっていますが、沖縄電力を除き、原発が止まっているすべての電力会社にも値上げの可能性があります。しかも、東京電力が厳しいリストラをすでに断行したのに対し、他の電力会社はまだなので、値上げ率がより大きくなる可能性も考えられます。
以上のような負担増を全部合わせると、いったいどれぐらいの額になるのか。年収500万円の標準世帯で、年間約29万円と試算されるのです。月額に直すと、約2万4000円。これだけ毎月の手取りが、ほぼ確実に減るわけです。
※マネーポスト2012年秋号