国内

大津市事件 ネットの義憤は教育現場の無責任さ助長しただけ

 大津いじめ自殺事件では、ネット住民による“制裁”が相次いだ。関係者の個人情報が続々とウェブ上に書き込まれ、それらをもとに学校や市教委には電話やメールの抗議が殺到。そしてついに市教育長が19歳の大学生に襲撃される事件まで発生した。「ネット自警団」の浅はかな義憤は、教育現場に何をもたらしたのか。ジャーナリストの鵜飼克郎氏がレポートする。

 * * *
 9月3日には、生徒が通っていた中学校で始業式があった。爆破予告や脅迫電話が相次いだため、朝6時から捜査員や教師60人が安全確認し、30人のPTA関係者がガードするなか850人の生徒が登校した。閉ざされた正門と裏門の中には警備員が3人配置され、教育現場には似つかわしくない「防犯カメラ作動中」の大きな看板が目を引いた。

 冒頭の通り、防犯体制強化は市庁舎も同じだ。平日朝の開錠時間を1時間遅らせ、休日の入庁には身分証明書の提示が義務づけられた。また、県警の指導により市教委と市長室前に防犯カメラを設置。市教委では2か所ある通路のうち、教育長を襲った男が使ったとみられる本館からの通路を封鎖した。

 今回のいじめ自殺事件で学校や市教委の対応は許されるものではない。ただ、私が前々号でレポートした通り、問題は個々人というよりも役人体質に染まりきった教育ムラの仕組みにある。つまり構造的な問題だ。

 市庁舎の警備体制を確認しようと市管財課を訪ねたところ、「警備体制が漏れて問題が起きたら困る」と取材には応じず、市教委は「ネットでターゲットにされないように」と会見の担当者をコロコロ代えるようになった。

 結局、ネットに蔓延る浅はかな義憤は、教育現場で誰も問題と正対しない「無責任体制」を助長しただけではないか。

※SAPIO2012年10月3・10日号

関連記事

トピックス

不倫報道のあった永野芽郁
《“イケメン俳優が集まるバー”目撃談》田中圭と永野芽郁が酒席で見せた“2人の信頼関係”「酔った2人がじゃれ合いながらバーの玄関を開けて」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
山口組がナンバー2の「若頭」を電撃交代で「七代目体制」に波乱 司忍組長から続く「弘道会出身者が枢要ポスト占める状況」への不満にどう対応するか
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん、母・佳代さんのエッセイ本を絶賛「お母さんと同じように本を出したい」と自身の作家デビューに意欲を燃やす 
女性セブン
日本館で来場者を迎えるイベントに出席した藤原紀香(時事通信フォト)
《雅子さまを迎えたコンサバなパンツ姿》藤原紀香の万博ファッションは「正統派で完璧すぎる」「あっぱれ。そのまま突き抜けて」とファッションディレクター解説
NEWSポストセブン
国民民主党の平岩征樹衆院議員の不倫が発覚。玉木代表よりも重い“無期限の党員資格停止”に(左・HPより、右・時事通信フォト)
【偽名不倫騒動】下半身スキャンダル相次ぐ国民民主党「フランクで好感を持たれている」新人議員の不倫 即座に玉木代表よりも重い“無期限の党員資格停止”になった理由は
NEWSポストセブン
ライブ配信中に、東京都・高田馬場の路上で刺され亡くなった佐藤愛里さん(22)。事件前後に流れ続けた映像は、犯行の生々しい一幕をとらえていた(友人提供)
《22歳女性ライバー最上あいさん刺殺》「葬式もお別れ会もなく…」友人が語る“事件後の悲劇”「イベントさえなければ、まだ生きていたのかな」
NEWSポストセブン
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
永野芽郁、4年前にインスタ投稿していた「田中圭からもらった黄色い花」の写真…関係者が肝を冷やしていた「近すぎる関係」
NEWSポストセブン
東京高等裁判所
「死刑判決前は食事が喉を通らず」「暴力団員の裁判は誠に恐い」 “冷静沈着”な裁判官の“リアルすぎるお悩み”を告白《知られざる法廷の裏側》
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《インスタで娘の誕生報告》大谷翔平、過熱するメディアの取材攻勢に待ったをかけるセルフプロデュース力 心理士が指摘する「画像優位性効果」と「3Bの法則」
NEWSポストセブン
永野芽郁
《永野芽郁、田中圭とテキーラの夜》「隣に座って親しげに耳打ち」目撃されていた都内バーでの「仲間飲み」、懸念されていた「近すぎる距離感」
NEWSポストセブン
18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん
「女性のムダ毛処理って必要ですか?」18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん(40)が語った“剃らない選択”のきっかけ
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《田中圭に永野芽郁との不倫報道》元タレント妻は失望…“自宅に他の女性を連れ込まれる”衝撃「もっとモテたい、遊びたい」と語った結婚エピソード
NEWSポストセブン