インデックス投資こそ、もっとも効率的かつ最適な投資法――。ファイナンス理論によって結論づけられたこの考え方は、広く投資家の間に知られているが、ちょっと待ってほしい。日経平均株価は安値圏から反転の兆しを見せず、TOPIX(東証株価指数)に至っては、6月にバブル後最安値をつけている。その一方で、多くの個別株が高値を更新している。
いったいどういうことなのか。22年間、株式市場で勝ち残ってきたカリスマファンドマネジャー・藤野英人氏(レオス・キャピタルワークス取締役・最高投資責任者)が、「インデックス投資=最強」神話に警鐘を鳴らす
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日経平均株価やTOPIXの値動きへの連動を目指す「インデックス投資」は、依然根強い人気がある。しかし、残念ながら、この10年間でTOPIXは26%も下落するなどまったく振るっていない。
そうしたなか、同じくこの10年間で全上場企業の60%近くの株価が上昇していることをご存じだろうか。
2001年9月末~2011年9月末までの10年間で、データがとれる上場企業2618社の値動きをみると、インデックスの低迷を尻目に、その半分以上に当たる1493もの銘柄が上昇しているのである。
さらにいえば、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ(東証1部・3092)やメガネ店「JINS」を展開するジェイアイエヌ(ジャスダック・3046)、100円ショップのセリア(ジャスダック・2782)などは、リーマン・ショックや東日本大震災などの危機に見舞われたこの3年間で株価が5倍以上になっている。このように、インデックスがいくら低迷しようと、それをはるかに上回るリターンが得られる個別銘柄は、実に多いのだ。
個別銘柄がこれだけ上がっているにもかかわらず、なぜインデックスが下落しているのか。
そもそも「インデックス=市場平均」と思われているが、それ自体が間違っている。TOPIXは全銘柄の加重平均といいながら、輸出ハイテク関連、金融など時価総額の大きな大型株の影響が強いし、日経平均は数多ある銘柄のなかの225銘柄の平均にすぎない。いずれも大型株の値動きに左右される指数であり、上場全企業の株価を平均しているわけではない。インデックスファンドといわれるものでも、実際は大型株に偏った「大型株アクティブファンド」といって過言ではない。
最大の問題は、それら大型株のなかに、株価が好調な企業がほとんどないことである。リーマン・ショック後の3年間で、株価が上昇した会社は1217社あるが、時価総額3000億円以上の大型株に限ると、わずか35社にすぎない。
しかも、そのなかで5割以上の株価上昇を見せた銘柄は、大東建託、ソフトバンク、住生活グループ、楽天のたった4社しかない。従来は手堅いとされてきた銀行株などは、三菱UFJフィナンシャル・グループが過去10 年で60%近く値下がりしているように、 惨憺たる状況となっている。
インデックスだから安心というわけではないし、「安全でお堅い」イメージの強い大企業への投資だからといって、決して安全ではないのだ。
※マネーポスト2012年秋号