今年は全日本プロレス・新日本プロレスの40周年。それぞれその帝国を築いたジャイアント馬場とアントニオ猪木は「宿命のライバル」だったが、実際のところ2人の関係性はどんなものだったのか。DVD付きマガジン『ジャイアント馬場 甦る16文キック』(小学館)第5巻では、生前の馬場さんと親交の深かったシンガーソングライターの松山千春が、2人の知られざるエピソードを明かしている。
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よく試合前の控室に会いに行ってたんですけど、いちばん驚いたのは、全日本プロレスの東京ドーム大会のときに、馬場さんの控室にアントニオ猪木さんが現れたことですかね。ドアが開いたと思ったら、入ってきたのは猪木さん。「あ、猪木だ」って、俺が緊張しました。
当時、世間では、馬場と猪木といったら誰もが知る宿命のライバルで通っていたし、猪木さんも盛んに馬場さんを挑発していたじゃないですか。「オレの挑戦を受けろ!」っていう感じで。実は、濱地紀生さん(注・プロレス会場設営会社社長。松山に馬場さんを紹介した)からも、力道山が亡くなった後の日本プロレス時代の末期、控室で、よく猪木さんが馬場さんを挑発していたっていう話を聞いていたんです。
猪木さんが、控室にもかかわらず、「早く決着をつけようぜ。いまこの場でもいいぞ!」なんて、馬場さんを本気で挑発していたとか。ほかのレスラーは誰も止められず、ふたりの兄貴分だった身長160センチの濱地さんが、「何やってるんだ! こんなとこで。やめろ、やめろ、やめろ」って、怒りながら間に入って、止めていたらしいんですよ。
そんなエピソードを聞いていたので、猪木さんが入ってきたときには、大変なことになるかもしれないぞ、なんて思いました。
すると、猪木さんは馬場さんの前まで来て、「馬場さん、ご無沙汰しています」って礼儀正しく、挨拶をしたんです。馬場さんはというと、「寛ちゃん、元気かい。葉巻はいつ持ってきてくれるんだよ」なんて、ごく普通に答えているんです。その様子に2度びっくりですよ。あれほど、ふたりの関係性がよくわかるシーンはないでしょう。ほんとに馬場さんて、人徳のある人なんだと思いましたよ。
※DVD付きマガジン『ジャイアント馬場 甦る16文キック』第5巻より