デモ終息後も、反日の機運いまだ静まらぬ中国。かの国を拠点として活動を続ける日本人ビジネスマンがぼやく。
「とくに、地方都市では対日感情がきわめて悪い。ホテルで宿泊拒否されたり、レストランでも出て行けといわれ、ほとほと困っています」
日本製品ボイコットが叫ばれる冷え切った日中関係のさなかだが、ビジネス上での関係が止まるわけではない。2011年のわが国の貿易相手国は、輸出入とも中国がトップ。輸出入いずれも20%前後を占めているなど、完全に切っても切れない存在なのだ。
今後、中国人とはどのように付き合っていけばいいのか。
『中国人の取扱説明書』(日本文芸社刊)の著者でジャーナリストの中田秀太郎氏に、ビジネスシーンにおける中国人との付き合い方について聞いてみたところ、こんな答えが返ってきた。
「中国と日本ではビジネス上での約束事がまったく違います。まずは、そうした彼我の差をちゃんと認識することが、ますます重要になるでしょう。たとえばケータイのマナーも違う。重要な会議でマイクを持って喋っているときでも、着信音が鳴れば出てしまう。もちろん、マナーモードにしておく人も少数派です」
“中国流”を知らない日本人が見たら唖然とするばかりか、バカにされたと感じて席を立ってしまうかもしれない。だが、そこで怒ってはいけないのだという。中田氏が続ける。
「ビジネスにおけるスピード感も大きく異なる。中国企業は、アイディアを思いついたらすぐに実行に移したがる。一方の日本企業は、調印や合意書の作成を経るなど、慎重に進める。日本人は早急な判断を恐れますが、中国人は時間がかかることに不安を覚えるのです」
日本企業では社員それぞれに裁量権が渡されておらず、本社にフィードバックしなければ回答できない場面も少なくない。日本側にとっては当たり前のタイムラグも、中国人にとっては「無駄な時間」であり、日本側への不信を募らせる原因にもなりかねない。
そして、難関となるのが宴席だ。度数の高い白酒を勧めあい、倒れるまで飲むこともある。酒が飲めない下戸は“戦力外”とされてしまうのだろうか。
「中国人は、どんなにビジネスの内容が魅力的でも、プライベートを共有した相手しか信頼しません。飲めなければ注ぎ役に徹してでもいいから、参加することに意義があるのです。忘れてはいけないのは、相手の話から家族の記念日などを聞いてメモしておくこと。奥さんの誕生日に贈り物を渡せれば、信頼度はグッと上がります」
さらに、「中国市場は、中国人に任せることも肝要」と中田氏は説く。
「中国では、マクドナルドよりもケンタッキーのほうが人気がある。ケンタッキーは現地人ゼネラルマネージャに大きな権限を持たせて、お粥や朝食用の揚げパンなどの中国オリジナル商品を次々と打ち出しているからです。中国人は面子をとても気にするから上から押さえつけようとするだけではダメ。権限委譲しつつ、うまく操ることが必要なんです」
日本の居酒屋での雑談なら、ただ中国を悪罵していればいいだろうが、実際のビジネスシーンではそうはいかない。
同書ではこのほか、「中国人がサイフの紐を緩める瞬間」、「中国版モンスターペアレント」などについても紙幅を割いている。こんな時期だからこそ、あえてやっかいなビジネスパートナーを研究してみるのもいいだろう。