ここ最近、バラエティー番組の企画でお笑い芸人がケガをするケースが相次いでいる。テレビ朝日系のバラエティー特番の収録で胸椎破裂骨折で全治3か月の重傷を負ったスギちゃん(39才)や、いとうあさこ(42才)。TBS系のバラエティーの収録で右足を負傷した森三中の村上和子(32才)など。いずれも体を張る企画での事故だったが、これだけお笑い芸人のケガが続いているのはなぜか? テレビ事情に詳しいコラムニストのペリー荻野さんがその背景を分析した。
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以前、タモリが番組で“昔は芸人がバンジーなんかやらなかった”って言っていたことがあったと記憶しています。確かにそうだなって思いますね。彼は芸歴長いから、あの年代の芸人と今の芸人を比べちゃいけないけれど、近年は芸人のやることの範囲が広がっていると、タモリは見てるんだなと感じたんです。
つまり、昔は漫才師とかタモリみたいなお笑いタレントは、体を張る芸人との間ですみ分けができていて、無茶をする人はいなかった。ダチョウ倶楽部や出川哲朗というリアクション芸人がいるけれど、今はそうじゃない人たち、そこそこ有名で売れている芸人でも、体を張った無茶なことをやるようになっていますよね。森三中のように体を張った仕事をしなくてもいいポジションにいても、求められてしまう状況がある。
スギちゃんだって39才だし、今年2月に『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の収録でケガしたずんのやすだって、43才。売れる売れないというのが芸人の世界なので何才になっても体を張るのが芸人だといわれたらそれまでだけど、昔は40才過ぎた人に体を張った無茶な仕事なんてほとんどさせてなかったと思いますよ。
もうひとつは、AKB48を始めとしたアイドルが芸人と同じような仕事をするようになったことも背景にあると思います。アイドルとして最前線で活躍しているコたちが、バンジーをしたり激辛料理食べたりして派手なリアクションをするわけでしょ。昔はAKBクラスの子たちにバンジーなんてさせませんでしたよね。
彼女たちアイドルが芸人の仕事をするようになって“ギリギリ”のハードルが高くなっている。アイドルがやるなら芸人はもっとやらなきゃってなるわけで、制作サイドからは、もっと上を求められてしまう。するとギリギリのハードルがどんどん高くなってしまうから、芸人は少々キツイことでもやってしまう。だから、今回のようにケガをしてしまうケースが出てくるんだと思うんです。
それに、本来なら、芸人はその人が持っているネタとかトークで表現できればいいけれど、今、芸を見せられるようなネタ番組が減ってしまってほとんどない。だから体を張った仕事の比重が高くなっているんじゃないかな。頻度的にもそうだし、さっき言ったように求められるハードルが高くなっているので、相対的に危険になっているという流れがあるような気がしますね。
じゃどうすればいいのかといえば、なかなか難しいですよね。ナイナイの岡村隆史がラジオで“プロテクターをつけてやっても面白くないだろう”という趣旨の発言をしてましたが、その通りなんですよね。だから、作り手がよく考えて番組を作るべきなのかもしれません。ただ、今はやりすぎたなっていう流れがあると、テレビって収束するのは早いからしばらくは落ち着いても、また少ししてから過激なことをやろうとするというのがこれまでの流れだったりします。だから、いずれまた芸人が体を張ったことをやるような過激な番組が出てくるかもしれないですよ。