ご飯やパン、麺類やいも類、ケーキなど糖質を含む食べ物を控えるだけで、あとは焼き肉も唐揚げもお酒も、食べ放題・飲み放題。しかも運動もしなくていいのに、みるみるやせていく。
そんな手軽さが受けて大流行中の「糖質オフダイエット」。ところが、「糖質オフダイエットは体によくない」、そうした話が広がり、波紋を呼んでいる。
きっかけは、日本糖尿病学会の理事長・門脇孝さん(東大病院長)が読売新聞の取材に「極端な糖質制限は、健康被害をもたらす危険がある」と語ったこと(7月27日付)。詳しくは後述するが、短期的にはケトン血症や低血糖症、脱水、長期的には心筋梗塞、脳卒中、がんの危険性を高める恐れがあると指摘した。
あらためて、同会の監事で順天堂大学糖尿病内分泌内科教授の綿田裕孝さんに話を聞いた。
「炭水化物を40%未満に抑えるような極端な糖質制限をした場合、結局のところ脂質やたんぱく質で栄養を補うことになります。その結果、脂質やたんぱく質の過剰摂取につながってしまいます」
そうすると、いったいどうなるか。
「極端に炭水化物を制限すると、短期的には、体内が酸性になって昏睡状態を引き起こすケトン血症になる可能性があります。極端でない炭水化物制限でも、長期的には肉や魚の摂りすぎによる高たんぱく質の食事で腎機能を悪化させたり、脂質の摂りすぎにより動脈硬化を促進させ、心筋梗塞や脳卒中、あるいは大腸がんの危険性を高めることにもつながりかねません」(綿田さん)
そのうえで綿田さんは次のように警鐘を鳴らした。
「何より、糖質制限に対する長期にわたる追跡データは、いまだにありません。短期的にはやせたり、血糖値が下がる可能性は確かにありますが、5年後、10年後にはどうなっているのか、今後起こりうるリスクがわからないのです。それは健康な人のダイエットにもいえます。バランスの良いカロリー制限をしたほうが安全だと思います」
ただし、日本糖尿病学会はまだそこまでいえるデータを持ち合わせていない、としたうえでこう話した。
「“健康被害をもたらす危険がある”というのは、理事長が個人的見解を語ったもので、学会としては声明は出していません。現在は炭水化物を総摂取カロリーの50~60%にするカロリー制限食を勧めていますが、さらに減らせるかどうか、科学的見地からの検討を始めています」(広報部)
一方で、「健康被害に遭ったという糖質制限への批判の多くは、誤解がある」と指摘するのは、九州大学名誉教授の藤野武彦さんだ。
「“糖質の制限でやせられる”というところだけが一人歩きし、拡大解釈をして極度の糖質不足に陥った人、たんぱく質や脂質を過剰摂取した人たちについて報じられたことが誤解の原因ではないか。勝手に解釈して、自分の都合のよいように実行するのは間違いです」
確かに糖質を抜けば何を食べてもいいとは謳っているが、とはいえ、偏った食事をしていては健康を害するのは当たり前。それはどんなダイエット方法でも同じだろう。
※女性セブン2012年10月11日号