今『赤い糸の女』が話題沸騰中だ。ちょっと前は『真珠夫人』、思い起こせば『愛の嵐』−−。そう、東海テレビ制作、フジテレビ系放送のいわゆる“昼ドラ”だ。『赤い糸の女』は、男女の愛憎ひしめくドロドロの展開に“セクシュアル”でどぎつい名セリフのオンパレードで話題を集めている。
制作する東海テレビには帯の昼ドラゆえの戦略がある。制作に加わっていた東海テレビの西本淳一プロデューサーが話す。
「夜はソファに座ってテレビを見る人が多いけれど、昼は家事や食事など“ながら見”をする視聴者が多いので、思わず画面に目がいくような演出を心がけます。例えば、意味もないのにガチャンと皿が割れたり強い風でドアがバタンと閉まる、とか。“ながら見”をしている人が思わずテレビ画面を見ると、主人公が『きみが好きだ』と愛の告白をするので、目が離せなくなる」
またドラマを担当する東海テレビの服部宣之プロデューサーは、昼ドラに課せられた“制約”を逆手に取ると話す。
「昼ドラはゴールデンと比べて低予算で時間的制約も多いため、ロケが少なくてスタジオセット中心です。夜景をバックに登場人物が見つめ合い、BGMで気持ちを表現する…なんて洒落たことができません。
その分、脚本とセリフを充分に練って見せる必要がある。そのため情感よりセリフ中心で、石田純一さんに『昼ドラは夜のドラマの2倍しゃべるよね』と言われたほどです。だからこそ、“セリフの力”を大切にしています」
何より必要なのは、ストーリーの“展開力”だ。かつて、東海テレビの名物プロデューサー・出原弘之さん(故人)は、「頭で考えた複雑な話は土日を挟むと訳がわからなくなる」と喝破した。以降、東海テレビには「何が何でも30分間楽しめる番組を作る」というDNAがある。
「他局は、月曜日に事件が起きて、火曜に展開して、水曜に真相を追って、木・金曜に決着する物語の作り方が多かったのですが、ウチはそれをやりませんでした。1話30分の中に必ず山場を作り、終わりに『それでどうなっちゃうの?』というところで『続く』にする。“昼ドラは30分間の商品としておもしろくないと通用しない”が信念です」(西本プロデューサー)
同時に、“制約”が多いだけに、出演者には高い“俳優力”が求められるとコラムニストのペリー荻野さんは言う。
「夜のドラマは俳優陣に気を使って無茶な演出ができないけれど、昼ドラは『この人がこんな演技をするのか』という冒険があるし、『ここまでやってくれるのか!』と感動もある。だから昼ドラに出演するのは、ものすごく根性がいる。でもその分、俳優さんは鍛えられるはずです」
※女性セブン2012年10月11日号