過ぎた紫外線対策は脳にも体にも問題だという。『ホンマでっか!?TV』でお馴染みの脳科学者・澤口俊之氏が脳科学の視点で分析する。以下は澤口氏の解説だ。
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この時期になっても「紫外線」、イコール「シミ」を気にして、日光を浴びないようにしている女性が多いようです。が、過ぎた紫外線対策は、健康上大きな問題があります。
それは、ビタミンD(正確にはD3)の合成が不足してしまう可能性です。ビタミンDは食べ物からでも摂取できますが、紫外線(特に波長が短いUV-B)によって皮膚で合成されます。
多量の紫外線を浴びることは皮膚がんのリスク要因となるので、日光が強い地域に暮らす人たちの皮膚は、紫外線から肌を守るメラニン色素により、黒くなります。そして逆に緯度が高く日照時間が短い地域の人ほど皮膚の色は淡くなることがわかっています。これは、体のメラニン色素を少なくして、紫外線によるビタミンD合成を促すためです。
ビタミンD不足が問題になるのは、紫外線量が少なくなる晩秋から冬にかけてと思われがちですが、実は、夏場でもかなり問題です。
現代の人々の生活スタイルは、狩猟や畑仕事で食糧を得ていた時代に比べると、夏でも日光を浴びていません。子供たちも外で遊び回りません。そして、日焼け止め剤の普及もあり、ビタミンDが不足している人が増えている傾向にあります。
北半球の多くの国々で死亡率がもっとも低いのは9月ですが、これは、夏休みの過ごし方と深い関係があります。夏休みのバケーションで日光をたくさん浴びてビタミンDの合成が促進された人たちは、健康で死亡率が低くなるのです。
さらに、ビタミンDが多い人ほど判断力などの脳機能が高いこともわかっています。認知機能の低下や認知症の発症を防ぐため、その治療にビタミンDを役立てる研究が進められているほどです。
ちなみにビタミンDを比較的多く摂取できる食材は、鮭のような脂肪分の多い魚、卵黄、きのこ類などです。
シミ予防だけに気をとられるのではなく、自分の健康のために、ビタミンDの効用を知り、できるだけ適度な日光を浴びるように心がけていただきたいと願います。
※女性セブン2012年10月11日号