自民党では安倍晋三・総裁による新体制が発足した。だが、新執行部を取り巻く内憂外患は、そうした浮かれ気分などすぐに吹き飛ばすことだろう。安倍氏の至近距離で取材を重ねる長谷川幸洋氏(ジャーナリスト)と鈴木哲夫氏(BS11報道局長)が、安倍自民について語り合った。
長谷川:次の選挙後には自民党を中心とする政権ができて「自民党総裁が次の内閣総理大臣になる」と多くの人が思っていたし、メディアも連日、そう報じた。となれば盛り上がるのも無理はない。
鈴木:安倍についていえば、非常にタイムリーに領土問題が総裁選に重なったためにクローズアップされたことは間違いない。もともと本人は総裁選出馬に消極的で「まだ先頭には立てない」といっていた。意外と世論がわかっていたのに、領土問題で一気に火がついて高揚してしまった。
長谷川:しかし、この盛り上がりも、総裁選があったからこそ。バブルのようなものです。1週間もすれば落ち着いてしまう。
鈴木:ええ。しょせんまだ野党の総裁選びなんです。自民党中心の政権ができる“かもしれない”というだけなのに、野党である立場を忘れているかのようなバカ騒ぎだった。総裁選の各候補の話からも、野党の党首として野田政権をどう追い込み政権を奪い取るかという必死さというか、戦略がほとんど聞かれなかった。
(文中敬称略)
※週刊ポスト2012年10月12日号