全国の100歳以上の高齢者の人数が、5万人を突破した。厚生労働省が調査を始めた1963年の153人からは、実に300倍以上に増えており、2050年には68万人にもなると予測されている。
「超長寿大国」日本において、我々はどのように年を重ねていけばいいのか。先人たちの生活から学ぶことは多い。
今年8月、ギネスブックで「公共交通機関を利用して世界一周をした最高齢者」に公認された曻地三郎さんは106歳。福岡在住で、知的障害児通園施設「しいのみ学園」園長としても知られる曻地さんの好物は肉だという。
「牛肉だとステーキや焼き肉、すき焼き。黒豚のしゃぶしゃぶや鳥の唐揚げも好きです」(曻地さん)
人間総合科学大学保健医療学部の柴田博学部長によると、肉や魚といった食事は長寿にプラスの作用をもたらすという。
「私が過去に日本全国の100歳以上の長寿者を調査した結果、タンパク質の割合が高いという特徴が見られました。
さらにいうと、タンパク質の中でも動物性タンパクの比率が高かった。動物性タンパクは、人体で生成できない必須アミノ酸を多く含んでいます。つまり肉や魚などの食事から摂るしかない。そのため菜食主義者に長寿者は皆無です」
曻地さんは3食きちんと規則正しく食べる。しかも毎食1口で30回噛むことを徹底しているという。この習慣に関しては、順天堂大学教授の白澤卓二氏も太鼓判を押す。
「噛むことで唾液分泌が増加して消化吸収がよくなりますし、虫歯と歯周病を予防する効果もあります。また、よく噛むことでドカ食いや早食いを防ぎ、食事量やカロリーの過剰摂取を防げる点も見逃せません」
しかも、よく噛むには自前の歯である必要はない。曻地さんも75歳から総入れ歯だという。
「100歳をこえて全部が自前の歯というケースの方が珍しい。だけど入れ歯であっても、きちんと咀嚼できれば問題はありません」(前出・白澤氏)
噛むことで脳の血流が増加し“脳力アップ”も期待できる。白澤氏は曻地さんの脳のMRIを見て驚いたという。
「短期記憶を司る海馬の萎縮が、ほとんど認められませんでした」
※週刊ポスト2012年10月12日号