シンガーソングライターの松山千春は、大のプロレスファンであり、生前のジャイアント馬場さんとプライベートで親交があったという。DVD付きマガジン『ジャイアント馬場 甦る16文キック』(小学館)第5巻では、松山が馬場さんの知られざるエピソードを紹介している。
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馬場さんと知り合ったのは、もう30年くらい前になります。馬場さんを紹介してくれた人がいるんですよ。俺のコンサート会場の設営をやってくれていた、東海クリエイトという会社の社長で濱地紀夫さんという人です。
濱地さんは、力道山がいた頃の日本プロレスでプロレス会場の設営をやっていて、もうプロレス関係者なら誰でも知ってる人。馬場さんと非常に仲が良く、というよりも、濱地さんが少し年上だったので、いわば馬場さんの兄貴分のような存在だったと思います。濱地さんの身長は160センチくらいで、有名な凸凹コンビでした。
その濱地さんが、ある日「千春は、馬場は嫌いか?」って聞くので、「何言ってるんですか、大好きですよ」って答えたら、「じゃ、今度一緒に飯でも食いに行こうか」と誘ってくれたんです。
実際小学校の低学年のときから力道山や吉村道明を見ていて、プロレスは大ファンでしたから。馬場さんを嫌いなわけがない(笑)。そして、その後食事をご一緒させていただきました。なので、最初から馬場さんとのつきあいは、完全にプライベートなものでした。
馬場さんは麻雀が好きなことで有名ですが、俺ともよく囲みました。で、結構ズルイことをやるんです。手が大きいでしょ。だから、麻雀のパイを4個一緒につかんで、全部見ちゃうんですよ。
あと、当たりそうなパイを、わざと手から落としてこっちに見せて、「千春はこういうので待つんだよな」とか言って、当たりパイかどうかの反応を見たり。そういうズルを平気でやっちゃう(笑)。そんな茶目っ気があったので、一緒に遊ばせてもらって、すごく楽しかった。
名古屋でこんなことがありました。馬場さんと濱地さんと俺ともうひとりで、いつものように徹夜麻雀となったときのこと。朝の4時くらいになって、馬場さんはその日に試合があったので、そろそろ寝ようかということになり、お開きになったんです。
そして、俺と濱地さんは一緒のタクシーに乗って、ホテルに帰ろうとしている途中、タクシーの運転手が、「あっ、ジャイアント馬場だ!!」って声を出したんです。えっ!? と思って運転手が見ているほうを見たら、たしかに馬場さんがトレーニングウェアに着替えて、街中を走ってたんです。
麻雀が終わったあと、すぐに着替えて、そのままランニングに出たというわけです。しかも、止まったと思ったら、路上で腹筋を始めてね。そのときは笑ってしまいましたけど、さすがだなと心底感心しましたね。
※DVD付きマガジン『ジャイアント馬場 甦る16文キック』第5巻より