認知症の進行が止まった、胃ろうが不要になったなどなど。ガムを噛むことでさまざまな病気の治療や予防ができるという研究結果が得られている。専門家によれば、ダイエットやストレスの軽減効果も認められるというから驚き。明らかになってきた「ガムを噛む効果」の秘密に迫る。
河津歯科医院(東京都新宿区)の河津寛院長は、「子供は噛むことで頭が良くなる」とこう話す。
「幼稚園児や小学生を対象にした実験では、口腔ケアをきちんとしてしっかり噛めるようになった子供のほうが、そうでない子供に比べて、運動能力や学習テストの成績がアップしたという結果が出ています」
ある実験で女子大生を対象に、10分間ガムを噛ませてから食事させることを続けると、なんと9週間で平均1.5kgも体重が減少した。明治大学理工学部の小野弓絵准教授は、次のように明かす。
「脳には『もっと食べろ』と命令する摂食中枢があります。食前にガムを噛んでおくと、摂食中枢が刺激を受けて『もっと食べろ』という命令を出さなくなる。食べる量を自然と減らせるのです」
実験では肥満傾向の人ほど、ガムを噛むことで体重と内臓脂肪や皮下脂肪が減った。糖尿病や高血圧といった生活習慣病予防にも役立ちそうだ。
噛むことには、現代人にとって大敵であるストレスを軽減する効果もある。
「ガムを噛んでいる人と噛んでいない人にヘッドホンで大音量の非常ベルを聞かせる実験をすると、ガムを噛んでいる人のほうが、ストレスを感じたときに血中に放出されるノルアドレナリンなど神経伝達物質の量が比較的少ないという結果が出ました」(小野准教授)
「歯を食いしばって頑張る」という言葉があるが、人間は昔から噛むことでストレスを紛らわせていたのかも。
さらには、がん予防さえも。
「ストレスを与えたラットの口元に割り箸を出すと、ガリガリと箸がなくなるまで1時間以上噛み続けました。そうしてストレスを発散したラットは不整脈が減ったんです。発がん性物質を投与したラットも、噛むことで、その後の腫瘍の発生率を減らすことがわかりました」(小野准教授)
※女性セブン2012年10月18日号