橋下徹・大阪市長率いる「日本維新の会」がここにきて失速している。各種の世論調査では支持率を減らし、国民が抱いたあの期待感はどこかへ消えてしまったかのようだ。
維新の失速によって、候補者公募に応じた維新政治塾の塾生たちには大きな動揺が広がっている。 大阪出身の若手塾生はこう悲鳴を上げる。
「早く公募の結果を決めてほしい。維新に風が吹いているうちにというのもあるし、何よりもどの選挙区から出馬するかを決めてもらわないと準備ができない。それに、橋下さんが出馬しなくて戦えるのかという不安も大きい。維新に合流した国会議員たちでは頼りない。われわれ塾生から見ると、あの議員たちは、ホンマは選挙に負けるから維新の看板が欲しくて合流したのが丸見え。本気で維新の改革理念を共有しているとは思えない」
日本維新の会に合流した国会議員をそう批判するが、維新人気をアテにしてバッジをつけたいという打算は塾生たちも変わらない。
40代の地方議員は、公認を得ようと維新の議員団や橋下ブレーンの政治家たちから推薦状を何通も集めて出馬の準備を進めてきた。それが水の泡になりかねないと焦っている。
「維新の会の勢いが失速気味なのは事実。肌で感じる。結局、橋下さんは国政進出にあたって領土問題などで大風呂敷を広げすぎて、引っ込みがつかなくなっているんでしょう。それが原因。だから選挙はもっと先のほうがいい。橋下さんのことだから、それまでには反転攻勢をかけてくれると思う。なんとかもう一度風を呼び戻してほしい」
そう藁にもすがる言い方をしたが、「このまま風が止まればどうするか」と質問すると、「公募辞退も考えます。維新の政治能力や戦略に期待して応募したのだから、その能力が中途半端だったら見切りをつけるしかない」という。
維新の公認も決まっていないのに「維新の人気が落ちているところに紙爆弾をやられたらどうしよう」と戦々恐々としている元地方議員や、「会社を辞めてまで公募に応じたのに今、選挙をやらなければ落ちてしまう」と焦りを隠さない塾生もいる。
現職地方議員の30代の塾生は、さらに生々しく本音を語った。
「維新塾には政治の素人とわれわれのような地方議員がいるが、やはり地方議員の方が現実をドライに見ている。たとえ公認をもらっても、維新がこけた場合、『維新の会を信じられなくなった』と辞退して無所属で出るか、参院選や東京なら都議会選挙に回る選択肢がある。選挙資金も自前だから放り出すのは簡単。国会議員もそうですが、ある程度政治をわかっている地方議員はメリットがないとわかればいつでも逃げ出すことを考えている」
「勇将の下に弱卒なし」というが、候補者たちが風に一喜一憂する弱卒ばかりでは、国政に議席を得たとしても、橋下氏の号令一下、改革に邁進するとは思えないのである。
※週刊ポスト2012年10月19日号