50才を超えても30代に見える医師として大人気の南雲吉則(なぐも・よしのり)先生(57才)が、読者から寄せられた体に関する相談に答える。今回は更年期障害のような症状について。
【質問】
45才を過ぎたころから、夜眠れなかったり、やたら顔に汗をかいたり…。年齢的に更年期だと思うのですが、どうしたらラクになりますか?(トイプードル・47才・主婦)
【南雲先生の回答】
急に大量の汗をかいたり、イライラしたり。女性の更年期症状は、切実な悩みだよね。症状がひどくなって、家事や仕事など、日常生活に支障をきたすことを、“更年期障害”というんだけど、更年期は、女性ホルモンと深い関係があるんだよ。
そもそも女性ホルモンって卵巣から分泌されているんだけど、分泌量のピークは18才から20才くらい。25才くらいからだんだん量が少なくなって、50才前後になると卵巣の働きが衰えてほとんど分泌されなくなり、やがて閉経を迎えるんだ。
閉経前後5年の10年間に起こる体調不良が、更年期症状というわけなんだね。
更年期症状の緩和方法をお話しする前に、まずは更年期の仕組みについて考えてみよう。
卵巣から分泌される女性ホルモンは、血管を通って体中に運ばれるんだけど、その量は脳によってコントロールされているんだ。女性ホルモンの量が減ってくると、脳は“もっと出せ!もっと出せ!”と卵巣に対して命令する。そのうち卵巣が力尽きてまったく女性ホルモンを出せなくなってしまっても、脳っていうのは頑固な器官だから、卵巣に“出せ”と指令を出し続けるんだ。
卵巣に指令を出す脳の〝視床下部〟は自律神経も司っているから、自律神経のバランスが崩れてしまう。そして、不眠やめまい、疲労、のぼせのような、更年期症状を引き起こすってわけ。
こう言うとわかりやすいかな。たとえば止まっているエスカレーターの上を歩くとき、止まっていることがわかっていても歩きづらかったり、踏み外してしまうことがあるよね。あれは、脳が“エスカレーターが止まっている”ということを、理解できないからなんだ。“エスカレーターは動くもの”という認識を、簡単には変えられないんだね。
それと同じで、閉経が近づいて女性ホルモンが出なくなったことを、脳が理解できないということなんだ。では、更年期症状を軽くするにはどうしたらいいか? キーワードは“自律神経のリズム”だよ。
自律神経は、交感神経と副交感神経のふたつからなっていて、昼間は活動モードの“交感神経”、夜はお休みモードの“副交感神経”が、働くようにできているんだね。だけど更年期になると自律神経のリズムが崩れるから、眠るべき時間に目が覚めてしまったりして、不眠になってしまう。そして、眠れないことでさらに体調が悪くなるという悪循環に陥ってしまうんだ。
正常なリズムを取り戻すためにいちばんいい方法は“朝”と“夜”を、はっきり体にわからせてあげること。
それには、夜明け前に目を覚まして、日の出を拝むと効果的なんだ。暗闇から、ぱっと光が射す瞬間が大事なポイントになる。日の出時の太陽光線を見ると、目の奥にある“視交叉”というセンサーが太陽光線をキャッチする。そして体内時計をリセットしてくれるから、自然に昼間は活動モード、夜はお休みモードになるんだよ。
と同時に、日の出を拝むことで、脳から“幸せホルモン”であるセロトニンが出て、ホルモンバランスの関係でうつっぽくなりやすい気分をほがらかにさせてくれる。さらにセロトニンは、メラトニンという睡眠を誘発するホルモンの分泌を促すので、更年期に特有の、不眠の悩みも解決してくれるんだ。日の出が無理な場合は、朝日を浴びるだけでも、充分効果は得られるよ。
※女性セブン2012年10月18日号