9月20日に公表された、平成23年度「国語に関する世論調査」(文化庁、今年2~3月実施)によれば、「読む力」の衰えを感じる人の割合は78.4%(平成13年度比9.6ポイント増)、同じく「話す力」の割合は69.9%(同10.7ポイント増)など、この10年で日本人の日本語能力の衰えを感じている人が大幅に増加している。
さらに多いのが、日本語の誤用だ。本来の意味とは違う使い方が、蔓延している言葉が少なくないのだ。そこで、間違いやすい日本語を例文で紹介し、東京女子大学の篠崎晃一教授に正しい用法を解説してもらった。
<なりふり構わずケンカをふっかけて、ほんと破天荒な性格だよね>
平成ノブシコブシ・吉村崇(32才)の“破天荒キャラ”など、豪快で無茶をする人を「破天荒」と呼ぶことが増えているけど、実際のところは?
「唐の時代の荊州(現在の湖北省)は、官吏登用試験の合格者が1名も出なかったことから“天荒”(=未開の荒れ地)と呼ばれていました。その土地出身の劉蛻という人物が試験に初めて合格したときに、“天荒を破った”といわれ、それ以来、誰も成し遂げたことのない偉業を達成することを“破天荒”と呼ぶようになったのです」(前出・篠崎さん、以後、「」内は篠崎さん)
つまり、「破天荒」とは「前人未踏」と同じ意味。本来「豪快」という意味ではないのだ。
<同じ間違いを繰り返すなんて、失笑もんだよ>
例文の「失笑」は、「笑いも出ないくらいあきれる」という意味で使用されているが、これは誤用。「失笑」の本来の意味は、笑ってはいけない場面などで、こらえきれずにうっかり笑ってしまうこと。しかし今回の調査では、「あきれる」という意味で捉えていた人の割合は60.4%にものぼり、かなり広い範囲で誤用が進んでいる。
「“失笑を買う”という、愚かな言動を繰り返して笑われる様子を表す慣用句があるので、あきれた行為を“失笑する”と言ってしまうのでしょう」
<久しぶりのご馳走に、舌づつみを打った夜だった>
漢字で表記すると「舌鼓」となるように、正しくは「舌つづみ」。腹太鼓を意味する「腹鼓」も「はらづつみ」と読まれがちだが、こちらも正しくは「はらつづみ」だ。
「“つづみ”が言いやすい“づつみ”という言葉に変化するように、音の順番が入れ替わることを、“音位転倒”といいます。“山茶花”(さんざか)と書いて、“さざんか”と読むようになったのと同じですね」
他にも、音が入れ替わった言葉として、「新しい」や「だらしない」がある。
「江戸時代には“逆さ言葉”というものが流行り、それが一般に広まったという説があります。“新しい”は本来、“あらた・しい”と読んだのですが、粋がった江戸っ子が“あたら・しい”と。同様に、きちんとしていないという意味の“しだら・ない”を“だらし・ない”としたのです」
※女性セブン2012年10月18日号