橋下徹・大阪市長率いる「日本維新の会」がここにきて失速している。各種の世論調査では支持率を減らし、国民が抱いたあの期待感はどこかへ消えてしまったかのようだ。
維新が国民の期待を再び高めるには何が必要なのか。問われるのは一にも二にも橋下氏自身の覚悟である。
橋下ご意見番の1人、評論家の屋山太郎氏は直言する。
「橋下には強い反撃力がある。彼自身が出て論争すれば、負けたことがない。ここは、覚悟を決めて本人が先頭に立つべきではないか」
橋下氏が迷いを振り切って国政に出馬し、大阪市政改革で示したように、あくまで既成勢力と対決し、この国の統治機構を改革するという原点をはっきりさせる。橋下改革を変質させる幹部や地方議員、国会議員に「ついて来られないならついて来なくて結構だ」と迫って、捨て身で改革に投じるメンバーだけを引き連れて国政に挑む。
橋下氏自身が「この国には独裁者が必要」と語ったように、維新を完全掌握する独裁党首になれない政治家が、この国の統治機構の改革に取り組めるはずがないのである。
総選挙での維新の議席やその後の影響力も、橋下氏が出馬する場合としない場合では大きく違ってくる。
選挙情勢分析に定評のある政治ジャーナリスト・野上忠興氏はこう読む。
「橋下氏が出馬しない場合、維新がたとえ全国に候補者を擁立しても、勢力圏は近畿ブロックを中心とする限定的な地方政党にとどまるはずです。大阪市長が党首の政党が、大阪改革のために票をくれといっても、東京をはじめ全国の有権者はかえって失望する。議席もせいぜい30~40議席にとどまるのではないか」
逆に橋下氏が大阪を飛び出せばどうなるか。
「経済の地盤沈下が著しいという課題は大阪だけではなく、どの地方も直面している。橋下氏の大阪都構想の実験は、現在の中央集権の統治機構を改革し、地方が権限を持って独自に地域の浮揚をはかる分権国家の発想です。大阪のためではなく、改革を全国に広げるために総理大臣になるのだと前面に出せば、相当な共感を呼ぶ可能性がある。
維新の個別の候補者の力がどうであれ、橋下氏個人の決意ひとつで、維新は100議席を超えて政界のキャスティングボートを握る可能性は十分にあると分析している」(野上氏)
維新八策を掲げて全国に候補者を擁立すると豪語した橋下氏は、国民の期待に応える責任がある。もはや「自分の出番は次の次。国政改革は国会議員団に任せる」という逃げは通用しないのだ。
※週刊ポスト2012年10月19日号