尖閣諸島の領有権問題は、一向に収束の気配を見せない。日中間で軋轢が起きるたびに、「だから、沖縄に在日米軍が必要なのだ」という論がわき上がる。しかし、尖閣諸島における有事で、本当にアメリカは在日米軍を派遣して中国軍と対峙するつもりがあるのか。新刊『アメリカに潰された政治家たち』(小学館刊)を著わした元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、こう指摘する。
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この9月19日、パネッタ米国防長官は、習近平国家副主席と北京で会談し、「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲内だ」と説明したと伝えられています。国防長官がここまで言うのですから、適用されるのは間違いないでしょう。しかし、ここにはトリックがあるのです。日米安保が適用されたからといって、米軍が派遣されるとは限らないのです。
日米安保条約第5条には、日本が武力攻撃を受けた際のアメリカの行動について、「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と規定されています。問題は「憲法上の規定及び手続に従って」という部分です。アメリカでは軍隊を出動させるのに米議会の承認が必要で、議会が否決すれば、沖縄に米軍基地があっても海兵隊は出動できないのです。
日米安保と異なり、アメリカがカナダやフランスなど11か国と結んでいるNATO条約では、同盟国が攻撃を受けたら即時行動すると規定しています。これが日米安保の現実なのです。小さな無人島を守るために米軍人が血を流すことを、米議会が承認すると思いますか?
※『アメリカに潰された政治家たち』より抜粋