電力料金が9月から値上げされたが、このほか、ガソリンや、米干ばつを受けて小麦なども値上がりする。
ドライバーにとっては、ガソリン高騰に加えて、自動車保険の値上げも響く。損保の業界団体が金融庁に申請して制度改定されたものだ。自動車保険では無事故なら等級が上がり、事故を起こすと等級が下がるが、今回の改定で事故を起こした人に負担が重くなる。
たとえば年5万円の保険料を払っていた19級(無事故)の契約者が事故を起こすと、等級が3つ下がり、現行制度より4割高い8万2050円を、等級が回復するまでの事故後3年間は払い続けなければならない。
こうした業界の都合による値上がりもある。その典型が東京電力の家庭用電気料金値上げで、国際相場よりもバカ高な価格で燃料(天然ガス)を輸入し、しかも値上げで調達する資金の6割が原発のために使われる。原発マフィア温存のために消費者が負担を強いられているといっていい。
公共交通機関の値上げも、庶民を苦しめる。四国フェリーは10月1日から、消費税を除くと30年ぶりに料金を値上げした。中国JRバスや、意外なところでは東京・柴又名物の「矢切の渡し(江戸川の渡し船)」も100円から200円に値上げされる。理由は燃料の高騰や客足の減少だ。コストの逼迫は事実だが、生活に不可欠な交通機関の場合、自治体からの補助金など、消費者に負担をかけない選択肢もあるはずだ。
日用品の値上げはさらに多種にわたる。食用油は米国の干ばつ、乳製品の値上げは震災による生乳の減少や飼料価格の高騰が原因など、事情はさまざまに異なり、やむを得ない部分も多い。だが、食料品に関しては価格上昇を避けるために欧米では軽減税率(品目によって消費税を下げる)が採用されている国も多い。
「しょうがない」という理由で無闇な値上げが横行している現状は、国民にとって地獄である。
※週刊ポスト2012年10月19日号