2014年から消費税率が8%に引き上げられる見通しだが、そもそも日本を取り巻く経済環境は芳しいものではない。日本経済はどうなってしまうのか、経済アナリスト・森永卓郎氏が解説する。
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前回、1997年の橋本内閣時代の消費税アップは、一応は「減税」とセットで行なわれました。ところが、今回は減税がセットになっておらず、「純粋増税」となるわけです。そうなれば、家計の可処分所得が大幅に減っていくのは間違いありません。
一方で、日本を取り巻く経済環境もよくありません。ギリシャに端を発した欧州の金融財政危機は、米国経済にも、日本経済にも悪影響を及ぼしています。そして、何より危惧されるのは、中国経済への悪影響です。
中国のGDP(国内総生産)の成長率は、今年の4~6月期には7.6%まで低下しました。日本と比べたら大きな成長率ですが、問題は、直近の6四半期が連続して下落、つまり1年半にわたって成長率が落ち続けていることです。
しかも、新聞などは6四半期の連続下落という短いスパンのことしか報じていませんが、もっとさかのぼってみると、中国の成長率は2007年には14%でした。それが約5年間で7%台にまで下がってきているということは、中国経済の成長力に構造的な陰りが見えてきていると捉えることもできるでしょう。
加えて、欧州危機の深刻化によって欧州への輸出不振という影響が顕在化し、それに拍車を掛けたというのが中国経済の実情だと思われるのです。
昨今の日本経済は「中国の成長」に支えてもらっていたといっても過言ではありません。ところが、その牽引役だった中国がもはや引っ張り上げてくれなくなるとすれば、日本経済のさらなる失速は火を見るより明らかです。
さらに、現在の日本経済を支えている大きな柱である復興需要が、2014年ぐらいには消えていくことも予想される。しかも、それに時を合わせて、大幅な国民の負担増が次々に断行されるといった材料が揃えば、デフレがいっそう酷くなることは目に見えています。円高も続くでしょうし、いい要素など何もないわけです。
※マネーポスト2012年秋号