その道を究めること約1世紀。いまだ一線で活躍するオーバー90たちが高齢化日本を元気にする。91歳の報道写真家、福島菊次郎さんを紹介しよう。
山口県内の月3万8000円のアパートに暮らす小柄な男性。近隣の子供から「おじさん」と親しまれる柔和な男性こそ、『ピカドン ある原爆被災者の記録』を発刊し、1960年代後半には自衛隊と兵器産業の実態を雑誌に発表した福島菊次郎さんだ。
「カメラマンといっても、90を過ぎた老いぼれです。報道の前線でシャッターを切ることは少ないですよ」と話すが、いまも建設予定の上関原発の反対集会や、首相官邸の前のデモ集会に出向きシャッターを押す。
部屋には原発事故について書かれた新聞が積まれ、立てかけられた棺おけも。独立独歩の人らしく、棺おけも自分で製作したと話す。年金受給もせず、現金が必要になれば彫金の仕事で収入を得る。
「この国の政治には絶望していますよ」と話すが、国のやっかいにはならないという反骨の矜持は、生きる原動力になっている。
撮影■二石友希
※週刊ポスト2012年10月19日号