本当に潜水艇に乗っているかのように椅子が揺れ、蟹や魚が画面から飛び出る度に観客たちは「オーッ!」と歓声をあげている。最新鋭設備で竹島(韓国名・独島)を「遊覧体験」できるという「4D映像」に観客も満足している様子だ。ここは先月14日、ソウルに開館した「独島体験館」。
「歴史未来館」「自然館」「4D映像館」などのセクションに分けられ、23億ウォン(約1億6000万円)の政府予算が投じられただけあって、それぞれ力の入った展示物が置かれている。日韓問題渦中のオープン――当然、日本を意識する展示も散見する。
例えば歴史館には「独島に対する日本の挑発行為の数の推移」とする折れ線グラフがドーンと展示されている。近年は右肩上がりに上昇中。ちなみに何をもって挑発行為とするかの説明は一切ないのだが……。
同コーナーでは竹島の歴史的資料も展示されているが、紹介されるのは韓国の主張に沿った古文書ばかりだ。
〈独島は6世紀初頭まで鬱陵島(韓国領)に存在した于山国の領土であった。于山国はその後、朝鮮本土の新羅国に服属したので、独島は現在も韓国のものだ〉
次に自然館。竹島の120分の1模型が展示され、地形や生物が紹介されている。本来、政治的な主張を盛り込む余地はないはずだが、こんな説明文が掲げられていた。
〈独島の生態系は鬱陵島と密接に関係している。独島に自生する植物の大部分は韓半島(朝鮮半島)から鬱陵島を経て伝播した〉
来場者に展示物を紹介する職員もこう連呼していた。「独島はウリナラ(わが国)の宝です!」ただし、記者が館内を見る限り、直接日本に敵意をみせる展示は案外少ない。むしろ、事を荒立てず、実効支配を国内外にアピールする意図を随所に感じさせる。
正面入り口には、「独島は韓国領」を意味するハングルの貼り紙があり、脇には、欧米訪問客向けの英語の説明文が掲げられていた。
〈ヘイ、トム! 読んでくれ! 「我が領土としての独島」という意味だ!〉
ずいぶんと自信満々なご様子。ならば、ぜひとも国際司法裁判所に来て下さいませ。
※週刊ポスト2012年10月19日号