10月から自動車保険の新制度により、保険料が値上がりする。今回の改訂の基準となる割引率を設定した損害保険料率算出機構はこう説明する。
「これまでは事故があった人もなかった人も同じように1本の制度で位置づけていましたが、無事故で保険を使っていない人からすれば、事故にあった人と同じ程度の保険料を払うのは不公平。こうした無事故者による事故者の肩代わりを是正するために、新制度に改定しました」(総務企画部)
この機構の役員などには、大手損保会社の幹部がズラリと名前を連ねている。一斉値上げについて「各社で足並みを揃えたのではないか」という批判の声があがっていることについても聞いたところ、「それについてはコメントしかねます」と言葉少なだった。
確かに事故を一度も起こさない人が多い一方で、何度も事故を起こす人がいるのは事実。しかし、前出の機構が主張する“公平性”に対して疑問を呈するのは「家計の見直し相談センター」の藤川太さんだ。
「実は各社が発表した新制度をつぶさに見ていくと、『事故有係数』だけではなくて、事故を起こさない場合でも、半分近くの等級で保険料が上がっています。『公平性を保つため』というのであれば、事故者の保険料を上げるだけでなく、無事故者の保険料を下げるべきではないでしょうか」
こうした背景には、業界の“懐事情”があると指摘するのは、自動車保険に詳しい行政書士の秋葉祐二さんだ。
「ここ数年、自動車の登録台数は減少し続けており、自動車保険は不振にあえいでいます。特に若者の車離れが痛い。保険に入ってからの年数が浅く、割引率の低い若者は損保のドル箱になっていましたからね。
一方で、保険料の安い高齢層の割合は増えていますが、彼らは事故を起こす頻度が高いため、損保の収益は悪化する一方なんです。かといって、安易な値上げは許されない雰囲気のなかで、世間の理解が得やすいからという理由でターゲットにされたのが『事故を起こした人たち』なのです」
※女性セブン2012年10月25日号