国際情報誌・SAPIOが11月号で『いまこそ日本人の「誇り」と「自信」を謳い上げる。中国よ!韓国よ!「ニッポンの覚悟」』との大特集を打ち出した。その狙いは何か、以下は同特集の巻頭言だ。
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文明と人間が、そして国家が進歩するものならば、かつての日本人にできたことが、今できないはずはない。
長く泰平が続いた封建社会から近代国家を築いて百数十年、日本は「三度目の建国」を迫られている。最初の建国は、もちろん明治維新だった。
日本近現代史の第一人者である東京大学名誉教授の鳥海靖氏は、維新の立役者をこう評す。
「いわゆる維新の三傑は、それぞれ違う分野で能力を発揮した。西郷隆盛は軍事面でリーダーシップを示し、薩長同盟を結んで倒幕を実現した。大久保利通は政治交渉、宮廷工作に長じ、国家建設と後進の育成に力を注いだ。木戸孝允はアイディアに富み、廃藩置県など新政府の政策を打ち立てた。 三人は違うタイプだったが、迫る欧米列強に対する強い対外危機意識を共有していた。彼らが協力しなければ維新は成し遂げられなかっただろう」
二度目の建国は焼け野原の敗戦からだった。ここでも牽引役はいた。
「吉田茂は気概を持った政治家だった。戦前は外交官として陸軍と衝突し、排斥もされたが、戦後は国の立て直しに奔走した。日本にまず必要なのは経済発展であると目標を据え、朝鮮戦争でアメリカから再軍備を求められた際にはそれを最小限に抑えた。そして、池田勇人や佐藤栄作といった有能な若手官僚を抜擢して育てたことも大きい。このあたりは大久保とも似ていた」(鳥海氏)
そして平成の日本は、外敵によるのではなく、「自らの意思で国を作り替えること」を初めて求められている。より一層、日本人の力量と覚悟が問われる改革である。リーダーとなる「平成の三傑」はもちろん必要だ。しかし傑物が生まれるのは、国民があまねく参加して育む豊穣な知性の海があってこそだろう。
明治維新から遡る黒船来航の折、ペリー総督は日本人を驚かせて屈服させようと蒸気機関や大砲を見せつけた。すると浦賀奉行所の与力・中村三郎助は、それが「蒸気機関車と同じ仕組みである」「大砲の型は××である」と正確に指摘し、ペリーが示した地球儀を指さして、ワシントンとニューヨークの場所を言い当てた。日本人の知識と科学技術のレベルに驚いたアメリカは、他のアジア諸国のように日本を植民地にすることは無理だと悟ったのである。
その当時、列強にいいように支配された中国や韓国は、いまや日本に迫り、凌ぐ国力を持とうとしている。しかし、百数十年にわたって世界の先進国家であった日本と日本人には、彼らにはない知恵と経験がある。新しい国を作る主役は、われわれ日本人一人ひとりでなければならない。
「経済立国に邁進したことは、基本的には正しかったが、一方でアメリカに防衛を丸投げし、偏った国になってしまった。日本には自助努力が必要だ。厳しい国際社会で生き抜くには責任感あるリーダーと、危機意識を持った国民の存在が不可欠だ。民主主義の時代になって、国民の責任はずっと重くなったはずなのだから」(鳥海氏)
今こそ、ニッポンの覚悟を示す時だ。
※SAPIO2012年11月号