10月2日、肺カルチノイドのため都内の自宅で亡くなった流通ジャーナリストの金子哲雄さん(41才)。金子さんが連載していた『女性セブン』の担当記者が、闘病の姿を明かす。
病気を公表しなかった理由のひとつは、明るく元気なキャラクターで親しまれる金子さんが、体調が悪いと知らされることで、仕事がしにくくなるのを恐れたためだった。
「僕のモノマネをしてくれるかたもいるんですから、元気でいないと」
とも金子さんは何度か口にしていた。
最後まで、金子さんは取材に応えて鮮やかに分析をしてくれた。ベッドで時折、咳込み、酸素吸入までしていながら、時にはこちらの飲み物のお代わりまで心配してくれた金子さん。
「わがままを言って、こうして『女性セブン』さんとかかわらせていただいていることが、寿命を延ばしていますよね、本当に。まだ必要とされているということを実感しながら死んでいけるっていうのは、実は、最高の死に方なんじゃないかなあ」
金子さんは、そう言って穏やかな笑みを浮かべていた。
「テレビの生放送に出て、終わった後に控え室でこと切れるっていうのが理想だったんだけど、酸素吸入器につながれた今、もうそれは叶わない。でも原稿はできる。死の直前まで、やりたいですよね」
亡くなる前日の9月30日、記者は金子さん宅を訪問した。白い半袖Tシャツ姿の金子さんは、ベッドで妻の稚子(わかこ)さんがいれた氷入りのミルクティーをストローで飲みながら、20分ほど話してくれた。その週買ったばかりのグーグルのミニタブレットに、稚子さんにちなんで『わかちゃん1号』と名前をつけたのだと言ってちょっと照れていた。
「玄関先までお見送りできなくてすみません。ありがとうございました」
金子さんはベッドに座ったまま、頭を下げてから、こちらの目をじっと見た。それが最後のお別れだった。
※女性セブン2012年10月25日号