日本にはびこる年功序列制度。良い面も悪い面も指摘されるが、体育会においては特に「年上が絶対」であるのは、今も昔も変わらないだろう。
プロ野球界において、この掟は遵守されている。ロッテに入団したころ、落合博満氏は先輩選手にサインをもらうとき、戸惑ったという。ある講演会でこう話した。
「1人でもらう分には良いんです。寄せ書きのときがいちばん困る。誰かに先に書いてもらった。次の選手のところにいく。『なんで俺がこいつのあとに書かなきゃ行けないんだ』となる。1か月間キャンプをしていても、1枚の色紙が出来上がるまで、大変なんです。順番を間違えると、最終的には身銭を切らなきゃいけない。新しい色紙を買って、年齢順に回って行かなきゃいけない」(落合氏)
年齢順だけなら、選手名鑑を見ながら、回れば良いだけだが、そうもいかないのが野球界の難しいところ。
「たとえば、江夏(豊)さんと田淵(幸一)さん(ともに元阪神)。田淵さんのほうが年上なんです。ところが、野球界に入ったのは江夏さんの方が先なの(江夏は高卒、田淵は大卒のため)。
2つの考え方がある。年功序列で年上の方が先だという考え方と、プロ野球に入ってきた順番で序列を決めるという考え方。サインをもらうとき、田淵さんは人のいい方ですから、気にしないでくれるんでしょうけど、江夏さんは気難しいですからね。『なんで、田淵の後なんだ』となる。
江夏さんは『田淵』と呼ぶ。普通は年上だから、『田淵さん』というんだろうけど。すごく優しい人なんだけども、そういうことにはものすごい厳しい人です。だから、(プロ野球界は)チームメイトのサインを集めるだけで大変なんです」(落合氏)
プロ野球界の序列は、一般社会以上に厳しい。